楽しみにしていたクリスマス
Tさんは当時、旦那さんと5歳の子どもと3人暮らし。
いよいよ来週に控えたクリスマスを楽しみにしている子どものために、ツリーを飾り付けたり、クリスマスケーキを予約したりと準備は万端。
「クリスマスは休日出勤しないでね、楽しみにしてるんだから」
その年のクリスマスは日曜日。Tさんは最近残業続きで帰りが遅く、休日出勤の増えた旦那さんにそう頼んでいました。
実は旦那さんが残業や休日出勤しているのは、仕事が忙しいせいではないのではないか、と疑念を持っていたTさん。
なぜなら旦那さんが帰ってきたとき、時々上着に茶色の長い髪や、ほのかな香水の香りがついていたからです。
「満員電車でついたんだよ!」
旦那さんはそう言いますが、それにしても頻繁すぎます。何よりいつも香水が同じ香りなのも疑わしく思ったのですが、Tさんは旦那さんに追及するのをやめました。
「ちょっと泳がせてやる…… 」
Tさんはそれから旦那さんの帰宅の遅い曜日と、香水の香りがした曜日をスマホにメモをして、いつか旦那さんが尻尾を出さないかと待っていたのです。
ただクリスマスはさすがに何もしないだろう、子どものためにきっと家にいてくれる、とTさんは旦那さんを信じていました。
いよいよクリスマス当日
待ちに待ったクリスマス。Tさんは予約していたケーキ屋さんにケーキを取りに行くため、昼間から外出をする支度をしていました。
「じゃあ、ケーキ取りに行ってくるからお部屋の飾りつけしててね」
旦那さんと子どもはクリスマスパーティーの準備中。車のキーを手に取ったTさんに、慌てた様子で旦那さんが言いました。
「ケーキは俺が取りに行くよ! ママ、パーティーのご馳走作るのに忙しいだろ?」
「まあ、そうねえ……」
「もう飾りつけも終わるしさ、俺が行ってくるって!」
なかば必死にそう言い張る旦那さんの様子に、Tさんは何か怪しいと思わずにはいられませんでした。