か弱い雰囲気の女性を見て、ついかばってあげたくなった経験はありませんか?しかしか弱く見える女性が、心の中までそうであるとは限りません。今回はそんなか弱い女性に陥れられた経験のある私の友人、Fさんから話を聞きました。

か弱い美人の先輩

Fさんが中途採用で入社したのは、アットホームな雰囲気の小さな商社でした。

転職して心機一転、がんばろうと張り切っていたFさんを指導してくれることになったのは、2つ年上でか弱い雰囲気で美人の先輩、Kさんでした。

「なんでも聞いてね! えーっと、何から教えればいいんだっけ……」
Kさんはあたふたと机の上に置かれたものを片付け、Fさんを隣りの席に着かせました。

Fさんが仕事に慣れる頃には、どうやらKさんはあまり要領の良い方ではなく、仕事のペースもゆっくりしているのがわかりました。

「Kさん、これ私がやっておきましょうか?」
「ゴメーン、お願い!」
繁忙期にはFさんがKさんの分まで仕事をしなければ、帰りが終電間近になってしまうほどでした。
「Kちゃんは仕事が丁寧だからなあ」
同じ部署の人たちは仕事の遅いKさんにも寛容で、微笑ましく思っているようでした。

雰囲気が一変

なんだか社内の雰囲気が変わった、とFさんが感じたのは、Fさんが入社して3か月後のことでした。
「Fさん、自分の仕事は自分でした方がいいよ」
「あんまりKちゃんを困らせないであげてね」
「Fさんのせいで帰りが遅くなったって聞いたけど、ちゃんと仕事に集中してよ」
などと、同じ部署の人たちがFさんに対して非常にきつくあたるようになったのです。

「私、何かしたのかな……」
悩むFさんをよそに、Kさんはいつものようにマイペースでゆっくりと仕事を進め、終わらなかった分は平気でFさんに回してきます。
「Fさんゴメンね、私この後用事があって」
そう言い残し、Fさんを置いて同じ部署の人と飲み会に行ってしまうこともありました。

「ねえ、KさんっていつもFさんに仕事押し付けてない?」
そうFさんに話しかけてきたのは、同じ部署の営業マンでした。彼は営業先から戻るのが遅くなり、たまたま飲み会に誘われなかったため、1人で残って仕事をしているFさんを見つけたのでした。
「ええ、まあ……」

Fさんが頷くと、営業マンは首を傾げました。
「聞いてた話と違うなあ。俺、Fさんに仕事を押し付けられて困るってKさんに泣きつかれたんだけど」
「ええ!? 私、押し付けたことなんてないですよ」

「多分Kさん、他の人にも同じこと言ってるよ。この会社オヤジが多いからさ、ああいう薄幸そうなか弱い美人ってえこ贔屓されやすいんだよな」
「そんな……」
「その仕事、手伝うよ。多分明日Kさん休むからさ、明日みんなを見返してやらない?」
「なんでKさんが休むってわかるんですか?」
「あの人飲み会の翌日、大抵休み取るから。まったく、二日酔いは病気じゃねえっつうの」
「はあ……」

どうやらその営業マンは、Kさんのことをこころよく思っていないようでした。
「仕事遅すぎて頼めないんだよ、あの人に。Fさんが入ってきてくれてほんと良かったよ」
その日は営業マンの力を借りて、Fさんはなんとか仕事を終わらせて帰ることができました。