いつもニコニコしていて優しい人って素敵ですよね、自分もそうありたいと思う人もいるのでは? しかしそんな優しい人ほど、心の中に何を隠しているかわからないことも。
今回はいつも優しい人の、裏の顔を垣間見てしまった昔の私の話を聞いてください。
今回はいつも優しい人の、裏の顔を垣間見てしまった昔の私の話を聞いてください。
クリニックの受付で
当時私が勤めていたのは、開業したばかりのクリニックでした。
医療事務で採用されたスタッフは主婦ばかりで、開業当初から一緒に働いている、いわばオープニングメンバー。
皆同世代ということもあってすぐに仲良くなり、いいチームワークで働ける職場でした。
医療事務のスタッフは受付と会計をする係、処方箋を入力する係、その他の事務作業をする係に分けられ、そのスタッフの割り振りはシフトを管理する院長夫人が行っていました。
院長夫人は優しい女性で、スタッフの悩みを聞いてくれたり、急な欠員が出れば自ら受付カウンターに入ってくれたりと、スタッフからの人望も厚い、とても素敵な人でした。
「ねえ、私って受付ばっかり回されるんだけど」
ある日、スタッフのRさんが休憩中にそんな話をしてきました。
「そうなんだ? 私は入力が多いかな」
「ふーん……」
Rさんは私の返事に、ニヤニヤとした笑みを浮かべます。
「実はさ、美人だから受付に回してるってこないだ奥様に言われたんだ」
「へえー、そうなんだ」
「やっぱ受付って華のある人がいいみたい」
「うん、そうかもね」
と肯定してみたものの、Rさんはいたって普通の容姿です。院長夫人が言うほど美人かどうかは私にはわかりませんでした。
それでもRさんが喜んでいるようだし、Rさんに入力を任せると間違いが多いので、受付が適任かな、などと考えて黙っていたのです。