「見舞いに行ったら、あいつ看護師さんとイチャイチャしてて」
「え!? どういうこと?」
「間違いないよ、浮気してる」
「そんな……」
Yさんは思わずその場にへたりこみそうになりました。
旦那さんのために、こんなにも毎日頑張っているのに。そう思うと猛烈に腹が立ちました。
浮気野郎に制裁
数日後、Yさんは仕事を休み、普段は行かない時間に旦那さんの病院へ行きました。
そして旦那さんが松葉杖でトイレに立つのを確認してから病室に忍び込み、ちょうど空いていた旦那さんの隣りのベッドの陰に身を潜めました。
するとドアが開いて、誰かがカーテンで区切られた旦那さんのベッドのところに行く気配。そしてまたドアが開き、松葉杖をついて歩く人の気配がしました。
「あ、トイレだった? 呼んでくれたら一緒にいってあげるのにぃー」
若い女性の声でした。他の人に聞こえないようにひそひそと話しているようですが、Yさんにははっきり聞き取ることができました。
「えー、じゃあ次は違うお世話もお願いしようかなー、なんちゃって」
デレデレと答える、旦那さんの声。やたらと親密そうな様子に、Yさんは背筋が寒くなるような気がしました。
「ちょっとアンタ、デレデレしちゃって良い身分だね!」
Yさんは隣のベッドから飛び出して、旦那さんのベッドの周りのカーテンをシャッと勢いよく開きました。
すると案の定、若い看護師の腰に手を回し、今にもキスをしそうなほど顔を近づけている旦那さんの姿が目に入ります。
「わわわ、お前どうしたんだよ……」
「え、奥さん!? 昼間は来ないんじゃなかったの?」
「うるさい! 黙れ!」
旦那さんは驚きのあまりバランスを崩し、ベッドに倒れ込んでしまいました。
「病院に、正式に抗議しますからね!」
Yさんは看護師にそう言い伝え、おもむろにバッグの中から1本の黒いマジックを取り出しました。
「アンタには、これよ」
「な、なにするんだよ……」
ベッドに横たわる旦那さんの脚を押さえ、Yさんは白いギプスにマジックを走らせてある一文を書き込んだのでした。
その一文とは……『私は浮気しました』
「おい、やめてくれよ恥ずかしい!」
「黙れ浮気者!」
その騒ぎにより、もちろん担当看護師は変更になり、旦那さんはそのギプスのまま残りの十数日を過ごすことになったのでした。
自分のために一生懸命働いてくれている奥さんを裏切った人には軽すぎるかもしれませんが、かなり恥ずかしいペナルティですね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:緑子