「来週には返すからお金を貸して」
ある職場で経験した借金トラブルです。同僚のA男とは、当時お互いに独身同士で、気軽に話し合える仲でした。
ある日突然、「大事な話がある」とA男に呼ばれ、「来週には返すからお金を貸してほしい」と頼まれました。詳しく聞くと、その額ウン十万円。そんな大金は当私にもなかったので、即断りました。
ところが「それなら、お前の名義で借金してほしい。絶対に来週には返すから」と相手も食い下がってきたのです。
最後は「こんなこと、独身のお前にしか頼めない。みんな結婚してるから、こんな話もできない」と泣き落とし。
世間知らずだった私は、結局言われるままに、自分の名義で借金をしたのでした。
やむなくお金を渡したものの……
借金したウン十万円を渡したものの、返済されるはずの翌週になっても、A男からは全く何の音沙汰もありません。
しばらく様子を見ていても、変化なし。とはいえ、このまま私が代わりに借金を返済するなんて御免です。
A男に「お金を早く返してほしい」と直接何度も言いましたが、その度にはぐらかされてしまいます。これは怪しい……?という気持ちと、仲が良かったからこそ、信じたい気持ちとが葛藤していました。
突然の逮捕?!
そんな中、突然A男が逮捕されたのです。容疑は「業務上横領と詐欺」。なんと、会社のお金を使い込んでいたとのこと。その上マッチングアプリなどで知り合った女性にお金を無心し、行方をくらますという方法で詐欺を働いていたのでした。
「独身のお前にしか頼めない」はずでしたが、既婚の同僚たちはもれなくA男にお金を貸していました。さらにあろうことか、同じ職場のB子に詐欺の手伝いまでさせていたといいます。彼の借金は、大好きなパチンコとスロットで作ったもののようでした。
私も警察で取り調べを受ける羽目になり、「あなたも共謀していたのではないか?」などときつく問われました。私の名義で借金をして、お金を渡していたからです。そのお金すら返ってきていないのに「女性にすり寄ってお金を引き出させるのがA男の常套手段だ」と詰め寄られましたが、A男を信用してお金を貸した自分が心底情けなく、涙が出るばかりでした。当然ながら、私の容疑は晴れました。
お金を貸した知人たちは私も含め、みんなA男と絶縁しました。
職場をクビになり、刑務所でのお勤めを終えたA男は、B子と一緒に暮らしながら仕事を掛け持ちしていると、風の噂で聞きました。
もともと社交的な人でしたが、彼に近づこうという昔の仲間はもういません。金の切れ目が縁の切れ目。注意したいものです。
Itnライター:田中つぐみ