台風の日に……
その日はちょうど台風が接近していて、雨風の激しい日でした。
Eさんは当時妊娠中で、小さな子どももいるので外に買い物もいけず、とりあえずこれから数日は家にあるもので食事を済ませなければなりません。
しかし家には数個のインスタントラーメンと、子どもが食べるお菓子しかありませんでした。
「どうしよう…… やっぱり非常時の食料をもっと買い置きしておけばよかった」
食料を保管している棚をごそごそと探っても、調味料以外は何も出てきません。
実はEさんの旦那さんがストックを嫌う人で、「食料を買い置きしていても、結局食べずに賞味期限が切れるだけだ」と度々チェックを入れてくるため、Eさんはあまり買い置きをすることができなかったのです。
食料を食べ尽くす旦那
「腹減ったなー、なんかないの?」
「ごめん、ラーメンしかなくて」
「しょーがねえな。作ってよ」
旦那さんに言われて、Eさんはラーメンを作り始めました。
「できたよー、あんまりストックがないからみんなで分けて食べよ」
Eさんがそう言うと、旦那さんは信じられないという顔でEさんを見ました。
「何言ってんだよ。俺の金で買ったもんだぞ」
結局旦那さんはラーメンを1人で食べきってしまいました。
翌日も同じで、旦那さんはEさんに作らせるだけ作らせて自分だけ食べ、残りのラーメンまで全て食べ尽くしてしまったのです。
「雨風が弱まったら、買い物に行ってきてくれない?」
子どもと一緒に、わずかなお菓子だけを食べてしのいでいたEさんがそう頼みました。
「嫌だよ、危ないし」
そう言ってごろりと横になり、そのまま眠ってしまいました。Eさんの心の中で、何かが折れた瞬間でした。
結局Eさんは雨風が弱くなってから、大きなお腹を抱えて1人でスーパーに買い物に行きました。
その後、台風は無事に過ぎ去り、日常生活がすっかりもとに戻りました。しかし旦那さんに失望したEさんの気持ちは戻らず、そのまま別居。そして離婚に。
旦那さんは、まさか離婚されると思っていかなったようで、何度も復縁を申し込んできたそうです。
しかし、一度信用できなくなった男性と一緒に暮らすことは難しいもの。
非常時こそ家族を思いやり、守ろうとする気持ちが欲しいところです。それなのに家族の分の食料まで食べてしまうような人では、家族としてやっていけませんよね。
ltnライター:緑子