我が家は井戸端会議の会場
Mさんの自宅は当時子どもたちが通っていた小学校のすぐ近く。
子どもが学校から帰ってくる時刻にはいつも家の前で、子どもを待つ他のママ友数人で井戸端会議をするのが習慣のようになっていました。
Mさんは家に人を招くのが好きなのでよくママ友を招待するのですが、さすがに毎日はMさんの家に集まるのは申し訳ないと、仲良しのママ友たちはMさんの家の前で集まることにしたのでした。
「ごめん、ちょっとトイレ貸してくれない?」
立ち話が長引くと、そう言ってMさんの家のトイレを借りに来るママ友も少なくありません。たまに、トイレが家までもたない子どもが駆け込んでくることも。
「いいよ、入ってー」
「ほんと助かる! ありがとう」
ママ友たちはいつもMさんがトイレを提供してくれるのに感謝していました。
実はMさん、表向きはこころよくトイレを貸していたものの、トイレ目当てで来る人が多すぎてちょっと困っていました。ですが、感謝されるのでなかなか言い出せなかったのです。
いつもと違うトイレットペーパー
「ねえパパ、ちょっとトイレットペーパー買ってきて!」
ある休日、Mさんは散歩に行くという旦那さんにおつかいを頼みました。
「いつものやつね、わかった!」
旦那さんはそう言って散歩に出かけました。
「はい、買ってきたよ!」
帰宅した旦那さんがMさんに手渡したのは、いつもと全く違うトイレットペーパー。
「え、何これいつものやつと違うじゃん!」
「だってこっちの方が安かったから……」
なんと旦那さんが買ってきたのは、安売りであまり使い心地がよくないトイレットペーパーでした。
「仕方ないなあ、もう……」
ちょうどトイレットペーパーのストックがなくなったばかりだったので、Mさんは仕方なくそのトイレットペーパーを使うことにしました。
図々しいママ友の一言
Mさんがトイレットペーパーを使いだしてから数日後、いつもの井戸端会議の最中にまたママ友のひとりがトイレを借りたいと言い出しました。
そのママ友はよく言えば正直、悪く言えば無神経で、空気が読めない発言ばかりを繰り返すので他のママ友からは微妙に距離を置かれていた人でした。
しかもMさんの家を公衆トイレ代わりに思っているのか、井戸端会議に参加していないときにもトイレを借りに来るのでMさんも困り果てていたのです。
「いいよー」
Mさんは一応こころよく、そのママ友を家の中に入れました。
「ねえMさん…… 」
トイレを済ませ、戻ってきたママ友は他のママ友の前で、信じられないことを言いだしたのです。
「なんかトイレットペーパーの質が悪くなってるけど、お金に困ってるの? 旦那さんリストラでもされた?」
とんでもない発言に、他のママ友たちは顔を見合わせて黙り込んでしまいました。
「えっと……なんかごめんね、旦那が間違えて買ってきちゃったの」
「なんだ、そうなんだ? トイレットペーパーの質は大事だって旦那さんに言わなきゃダメだよ」
なんであんたにそんなことを言われなきゃいけないんだ! と急に腹が立ったMさん。
「そういうこと言われちゃうなら、もうトイレお貸しするのやめちゃおかな」
「え!? 困るよ! ごめんごめん、怒った?」
ママ友は慌ててとりなしたものの、怒り心頭のMさんには響きませんでした。
その後Mさんは井戸端会議があっても、ママ友にトイレを貸し出すのをやめてしまいました。
例のママ友は他のママ友たちから、「トイレを借りておいてあんなことを言うなんて無神経すぎる」とかなり叱られたそうです。
人の好意に甘えておいて、文句を言ってはいけませんね。
ltnライター:緑子