Sもまた、元モデルという美貌を活かしてファッションショーに参加していました。Sの目的は、知人女性を引き立て役にして、自分が目立つことだったのです。
女の陰謀渦巻くファッションショーの行方や如何に!?
場を掻き乱すボス的存在
知人女性は趣味で裁縫クラブに所属し、そこで出会ったママ友達と仲良くクラブ活動を行っていました。
彼女はクラブ随一の技術者で、プロ並みのハンドメイド作品を数多く作っていたのです。
そんな彼女はメンバーの憧れの存在でしたが、唯一ボス的存在のママ友Sには目の仇にされていました。
「私より裁縫が上手いなんて、面白くない!」
こうして知人女性の才能に嫉妬したSは、予想外の方法で嫌がらせを行ってきます。
ファッションショーに向けて創作活動
そんなある日、Sの提案により、裁縫クラブ一丸でファッションショーに参加することになりました。
Sは強引に話を進めて、二手のチームに分かれて、ウエディングドレスをそれぞれ作ろうと言い出します。しかもチーム代表者に、無理やり知人女性を選出するではないですか。もちろん、もう片方のチーム代表者はS自身です。
「ウエディングドレスなら、ベールとか小物もあるし、チームプレイに向いてるわよね! 代表者がそれぞれ指示を出して、ドレス一式を完成させましょう! ちなみに完成したドレスは代表者が着て、ファッションショーに参加するってことでエントリーしてあるから」
Sはそう言って、裁縫クラブでも手芸が得意な女性ばかり、自分のチームに引き入れてしまいました。
しかし、知人女性は決して挫けずに「皆で良いドレスを作りましょう!」と自分のチームメイトを鼓舞したのです。
ワンマンぶりにゲンナリ……
自身の見込んだメンバーを選出したSでしたが、チームの雰囲気は最悪でした。
Sは相手のことを思いやらずに「モタモタしないで!」「デザインが気に入らないわ。やり直し!」などと言って、メンバー達に文句ばかり言っていたのです。
それとは逆に知人女性は、どのママ友達にも真摯に向き合っていました。例え裁縫の技術がそれ程で無かったにせよ、決して責めることなく「こうすると、やりやすいわよ!」「完璧じゃなくても、手作りの味わいがあるわよね!」と言って優しい言葉を掛けていたのです。
こうして両チームごとに制作が進行し、ファッションショーは本番を迎えました。
遂に迎えた本番
元モデルという経歴を持つSは、自信満々でステージに上がっていきました。
純白のドレスを纏い、バッチリメイクをした姿は確かに美しく、Sは「私が一番、目立っているわね」と悦に入ります。
しかし、知人女性の出番が訪れるとSは度肝を抜かれました。普段は控えめな印象の知人女性ですが、S以上に華やかにメイクを施し、何種類もの花でアレンジメントされた特大のブーケを持つ姿のインパクトはSの比では無かったのです。
ショーの際にインタビューを受けて、知人女性は笑顔でこう語りました。
「同じチームの中に、美容師のママ友がいたので、メイクをして頂きました。またブーケも、お花屋さんで働くチームメイトに作って貰ったんです。お互いの良いところを合わせることで、今日のコーデが完成したのです!」
このインタビューも好感を呼び、知人女性のチームはファッションショーで優秀賞を獲得しました。
自分勝手なSのチームは、ピリピリした空気でドレスを完成させることだけに集中していましたが、知人女性のチームには「この人についていきたい!」という仲間意識があったのです。
楽しいのが1番!
知人女性のチームに完全敗北し、自分勝手な振る舞いで人望を失ったSは自ら裁縫クラブを辞めていきました。
今では知人女性が先頭に立って、皆を引っ張ってクラブを運営しているそうです。
Sのチームメイトだったママ友達も「私達も、今度は笑顔で楽しくファッションショーに参加したい!」と口を揃えて言っているとのことです。
やはり思いやりあってこそ、良い関係性が構築されていくのですね!
ltnライター:六条京子