豪華な高級食材を使った大皿料理
私が勤める飲食店はとってもおしゃれな和風の居酒屋で、掘りごたつ式の個室が人気です。ある日、10名様のパーティー予約が入りました。料理が豪華に見えるようにと、大皿でどーんと出してほしいというリクエスト。高級食材を使った色とりどりの料理が出来上がっていきます。
私は2つの皿を運び、お客様が待つ個室へ。「お待たせしました~」と、個室へ上がった瞬間、右手のバランスを崩してしまったのです。これは大ピンチ! ワナワナと右手が震え、制御できません。
これはやばい! 焦る私。見つめるお客様。どうしよう! もうこれ以上持っていられない! どうしよう・・・。
今度は左手が!
すると今度は、安定していたかと思われた左手がブルブルと震え、バランスを崩し始めたのです。お客様が私の異変に気がついた! もうダメだ。私に残された手段は、お客様への被害を最小限に留めること。さぁどうする!
私は右手のスナップをきかせ、お客様の頭上を切り壁にドーーーン! 尋常じゃない音に、近くにいたスタッフも振り返る! 間髪入れず、もひとつおまけに右手の皿もドーーーン!
私は手に持っていた皿を、料理ごと壁ドンしました。お客様にぶっかけることだけは避けたかったのです。固まるお客様をよそに、私は壁から滑り落ちてくる高級食材を素手でかき集め、「大変申し訳ございませんでした! すぐに作り直します!」
まるで現代アート
壁から色とりどりの食材が流れ落ち、現代アートのようになった現場の惨劇。私にできることは、ありったけの力を振り絞って丁寧に掃除をし、完璧にきれいにすることだけでした。厨房に謝り店長に謝り、もう一度同じ料理を作ってもらいました。
不幸中の幸いは、お客様に汁一滴の被害もなかったことでした。優しい店長は「お客様にぶっかけなくてよかったね。」と言ってくれて涙。店にとっても大損害になり店長も涙目に。
私は慎重さに欠けていたと思い、大いに反省しました。食材を無駄にした罪悪感もあり、精神的にだいぶ落ち込みました。これからは、1皿ずつ運ぶようにします!
ltnライター:鈴木まさ美