今回は無理矢理子守りを押し付けられ、風邪までうつされてしまった私の友人Sさんのお話です。
結婚10周年の旅行
Sさんは旦那さんと結婚10周年記念の旅行に行くために、ウキウキ気分で1ヶ月も前からホテルや新幹線の予約をしていました。
旦那さんとの間に子どもは恵まれなかったものの、夫婦仲は良く、記念日には必ず2人で食事や旅行に出かけて美味しいものを食べるのを楽しみにしていました。
旅行を2日前に控えたある日、突然Sさんの家に旦那さんの妹、つまりSさんの義妹が子どもを2人連れて現れました。
「ねえ、今日旦那が出張でいないから、一晩子どもを預かってくれない? 子どものいない人にはわからないだろうけど、母親だってたまには羽根を伸ばしたい日があんのよ」
「はあ…… 」
義妹は随分派手な格好をしていたので、きっとこれからどこかに遊びに行く予定をしてるんだろうとSさんにはすぐわかりました。
普段から義妹は子どもたちを実家に預けて遊びに行ってしまうことが多いと聞いたので、ここで自分が断ると年老いた義両親が面倒をみなければならないことになると思い、仕方なくSさんは子どもを預かることに。
「わかりました、明日必ず迎えにきてくださいね」
「ありがと! 子どものいない夫婦に子守り体験させてあげるんだから感謝してよね」
そんな勝手なことを言って、義妹はそそくさと遊びに行ってしまいました。
突然の発熱
その日の夜。義妹の子どもたちはとてもおとなしくて良い子たちですが、その日はいつにも増しておとなしく、また少し顔が赤くなっているのに気づいたSさんは念のため子どもたちの熱を測ってみることにしました。
「わあ、すごい熱! 」
なんと2人とも、38度越えの高熱を出していたのです。慌てて布団に寝かせ、Sさんは義妹に電話をしました。
「ちょっと、今子どもたちが熱を…… 」
「ああ、朝から熱っぽかったのよねー。保険証とかは預けたバッグの中に入ってるから病院に連れて行ってくれる? 」
「え、熱があるのにうちに連れて来たんですか!? 」
「そうよ、おじいちゃんおばあちゃんにうつしたら悪いじゃない。Sさんなら丈夫そうだしいいかなって」
「そんな…… 」
電話を切ったSさんは、ちょうど仕事が終わって帰って来た旦那さんに車を出してもらい、2人を小児科へ連れて行きました。
色々な検査をした結果、2人ともひどい風邪であるとのこと。旦那さんは怒って義妹に電話をかけました。
「今薬のませたから落ち着いてるけど、子どもが熱で苦しんでるんだぞ! 遊んでないで早く帰ってこい! 」
「あー、はいはいすぐ帰るから」
結局すぐ帰ると言いながら、義妹が帰ってきたのは夜中の12時。旦那さんがお風呂に入っていたのでSさんが子どもたちを引き渡すと、義妹が言いました。
「明後日から10周年の旅行だっけ? 風邪うつってたら行けないねー、ざーんねん! 」
「え、どういうことですか? 」
義妹はニヤニヤと笑い、子どもたちを連れて帰って行きました。
旅行はキャンセル
そしていよいよ旅行の当日。早朝に目を覚ましたSさんは、喉の痛みと関節の痛みを感じました。実は前日からなんとなく熱っぽいような気がしていたのです。
「まさか…… 」
ベッドから出ようとすると足がふらつき、かなりの高熱が出ていることがわかりました。
「ごめん、あなた…… 」
Sさんは泣きながら旦那さんを起こし、熱があることを伝えました。
「大丈夫か? すぐに病院に行こう。旅行はキャンセルだ」
「ごめんなさい…… 」
病院に行くと、やはり風邪であるとのこと。義妹の子どもたちと症状が同じなので、うつされたに違いありません。
「お前が風邪っぴきの子どもを預けたせいだぞ! どうしてくれるんだ!」
自宅に戻ってから、旦那さんはすぐに義妹に電話をかけました。スマホをスピーカーにしていなくても聞こえるほど、義妹は大きな声で言いました。
「だってー、子どもも産めないくせにウキウキしちゃっててなんかズルいんだもん、私は毎日子育てに追われてるのにさー」
「お前……! いいかげんにしろ!」
旦那さんはSさんが不妊治療で辛い思いをしたことや、泣く泣く子どもを諦めたことを知っているので当然ブチギレ。わざと風邪をうつしたことを義妹の旦那さんや義両親にも訴えると、せめてものお詫びとしてホテルのキャンセル料が旦那さんから振り込まれました。
義妹は旦那さんと義両親からこっぴどく叱られたそうです。
その後義妹がちょくちょく子どもを預けて遊んでいた相手はマッチングアプリで出会った男性だということもバレてしまい、離婚をすることに。
親権もとられ、今は義実家で両親の監視のもと、小さくなって暮らしているとのことです。
人の楽しみを奪った報いは、思ったよりも大きかったようですね。
ltnライター:緑子