趣味のビーズアクセサリー作り
Aさんは当時専業主婦で、毎日趣味のビーズアクセサリー作りに精を出していました。というのもAさんのビーズ作品はとてもセンスが良く、ご近所やママ友たちに「こんな感じのを作って」と頼まれることが多かったのです。
「趣味でやってることだから」といつも材料費分の代金しか受け取らないAさんでしたが、周りの皆は「ハンドメイド専用のフリマアプリで販売したら、かなり人気が出るんじゃない?」と勧めていました。
というのもAさんの旦那さんは典型的なモラハラ夫で、いつも大きな声で「誰のおかげで生活できてるんだ」「そんなチマチマしたことができるのは俺が養ってやってるからだ」などとAさんに言っているのを、隣りの奥さんがよく耳にしていたからです。
「悔しいからパートに出たいんだけど、旦那が許してくれなくて…… 」
Aさんは悲し気に言いました。家事がおろそかになるという理由で、旦那さんからパートに出ることを反対されていたAさんは、ビーズアクセサリーを作るのが唯一の気晴らしだったのです。
旦那の会社が倒産
数年後、Aさんの旦那さんの会社は不祥事を起こしていきなり倒産。それまでかなりお給料が良かったのに、収入は旦那さんの失業保険だけになってしまいました。
「家のローンも払わなきゃいけないのに…… 」
「大丈夫だ、俺は優秀だからすぐ次の仕事が見つかるはずだ」
旦那さんはそう言ってハローワーク通いをすることに。
「こんな時だし、私も働かなきゃ!」
実はAさん、少し前からビーズアクセサリーをフリマアプリで販売するようになっていました。その作品の美しさがSNSなどで話題になり、注文が殺到。ビーズアクセサリー作家としての活動を始めていたのでした。
Aさんがビーズアクセサリーを販売して稼いでいる一方で、旦那さんはプライドが邪魔をしてなかなか次の仕事が見つかりません。いよいよ失業保険が切れ、Aさんの収入だけが暮らしを支えることになりました。
やけくそになった旦那さん
「クソっ! なんで全然受からないんだよ……!」
面接を受けた会社からの不採用通知を握りしめ、旦那さんはイライラと家の中を歩き回りました。
「ねえ、落ち着いて。きっとあなたに合った会社が見つかるわよ」
ビーズアクセサリーを作る手を止めてAさんが慰めの言葉をかけたものの、旦那さんのイライラは収まりません。
「うるせえ! お前に何がわかる! こんなチマチマしたもんで小遣い稼いでるからって偉そうに…… 」
「あなた、やめて!」
旦那さんはAさんがビーズアクセサリーの材料を入れている箱を取り上げ、床に放り投げてビーズをばらまいてしまいました。
さすがのAさんも、床を埋め尽くす勢いで広がっていくビーズを見て堪忍袋の緒が切れたといいます。
「ねえ、あなた」
「何だよ、文句あんのか!」
「文句はないわ。でもひとつ質問していい?」
「なんだよ!」
「あなた今、誰のおかげで生活できてるんだっけ?」
Aさんの質問に答えることができず、旦那さんは床に散らばったビーズを全て1人で拾い集めたそうです。
今では旦那さんも新しい会社に再就職することができたそうですが、収入を得られるようになった今でも「誰のおかげで……」と言うことはなくなったとのことです。
いつどんなきっかけで立場が逆転するかわからないですし、モラハラ発言ばかりしていると後で恥をかくこともありますね。
ltnライター:緑子