大事な親友
Uさんには高校時代からずっと仲良くしている親友、Kさんがいました。
おとなしくてちょっと人見知りなUさんに比べるとKさんは交友関係が広く、容姿も華やか。
全くタイプの違う2人ですが、高校の時同じクラスになってからなぜかお互い一緒にいると居心地が良く、就職してからもまだ付き合いが続いています。
「Kちゃんは私のことなんでもわかってくれてるから」
Uさんは自分を理解してくれているKさんをとても大事にしていて、Kさんの頼みであれば他の用事を断って相談に乗ったり、苦手な合コンにも数合わせで出席したりしていました。
親友に恋人を紹介
「Kちゃん、私やっと彼氏ができたよ」
UさんはKさんとの食事の席でそう打ち明けました。
「え、そうなんだ？ どんな人？ 紹介してよ！」
KさんはUさんのお相手に興味深々。なかば強引に頼み込み、その食事の場に彼を呼び出すことになりました。
「真面目なUちゃんの彼氏だもんね、きっと良い人なんだろうな」
ニコニコと彼の到着を待つKさん。ほどなくしてUさんの彼氏が到着しました。
「はじめまして、親友のKです！ 彼氏さん、すごいイケメンですね！」
Uさんの彼は背が高くかなりのイケメンで、Kさんは驚いたようでした。
「ねえUちゃん、なんかここ寒くない……？」
3人で会話を楽しんでいる最中、Kさんは突然、Uさんの車の中に置いてきた上着を持ってきて欲しいと言い出しました。
「いいよ、ちょっと待ってて！」
Ｕさんは親友の頼みとあらば、と車のキーをつかんで席を立ちました。
親友の裏切り
車の中に置いてあったカーディガンを持って戻ったUさん。そこで見たものは、Kさんが自分の彼氏の隣りの席に移動しているという光景でした。
「あれ……？」
2人ともUさんには背を向ける形で座っており、何やら熱心にKさんが話しかけているのが聞こえます。
「Uちゃんって学生時代結構遊んでて……あんな清純そうな顔してますけど、裏では何やってるかわかんないってみんな言ってたんですよ。男とっかえひっかえしてるって噂もあったし」
Kさんの口から出る信じられない言葉の数々に、Uさんはその場で立ち尽くしてしまいました。
彼氏の反応は……
「私なんか見た目より一途だし、結構尽くしちゃうタイプですよ」
Kさんはそう言って彼氏の腕にそっともたれかかりました。どう見ても誘惑しているようにしか見えません。
「Kちゃんだっけ、君はなんでUちゃんが遊んでたと思うの？」
彼氏の低い声が響きます。
「えー、だってすごい噂になってたからー」
Kさんの答えに、彼はいらだったような口調で被せました。
「噂だったら、全然でたらめなこと言ってもいいって思ってる？｣
彼氏の口調から、マズいと思ったのかKさんは彼から身体を離しました。
「あのさ、俺Uちゃんとは大学時代一緒のバイト先だったんだよ。学費稼がなきゃいけないからっていっぱいシフト入ってたのも知ってるし、あんたと違って男遊びする暇なんてなかったって俺が証明できるよ」
「ちょっと、何その言い方……！」
Kさんは声を荒げて立ち上がり、やっとUさんがそこに立っているのに気づきました。
「あーあ、盗ろうと思ったのにバレちゃった。ダサいあんたにはもったいないくらいのイケメンだよね。お幸せに、バイバーイ」
KさんはUさんの手からカーディガンを取り上げ、さっさと店を出て行ってしまいました。
「なんていうか、あの人すごいね。もう会うのやめなよ」
「うん……すごいショック」
Uさんは親友に裏切られた悲しみもありますが、彼が自分を信じてくれたことが嬉しかったこともあり、複雑な気持ちになったそうです。
その後Uさんは彼氏と結婚し、今は家族も増えて幸せな家庭を築いています。ただ親友に裏切られたショックから、ママ友を始めとする女友達とは一定の距離を置いて付き合うようになったとのことです。
ftnコラムニスト：緑子