整形はより美しい自分に生まれ変わるためのポジティブな手段ではありますが、作り物などと非難されることもあるのでなかなか公表できないという人も多いといいます。
今回は整形をしたことを大声で暴露されてしまった経験を持つ私の知人、Yさんのお話です。
ftnews.jp

婚約を報告

Yさんはかねてから交際していた男性にプロポーズされたばかり。近いうちに彼が両親とともに自分の家に来て、顔合わせをする予定だと仲の良い同僚数人に話しました。
「わあ、Yちゃんおめでとう!」
「良かったね、ずっと付き合ってた彼氏でしょ?」
「結婚式は呼んでね!」
Yさんはとても性格の優しい女の子ですし、仕事ぶりも真面目で職場での評判が良く、同僚たちは口々に祝福してくれました。ただひとりを除いては。

「へー、作り物でもいいんだ? 良かったね」
そう言ったのは美人でスタイルは良いけれど、ちょっと性格に難のある同僚、Sさんでした。
「ちょっとそういう言い方ないんじゃない?」
「だって本当のことじゃん。Yちゃん整形美人でしょ」
他の同僚が慌ててSさんを止めにかかります。
「いいよ、本当のことだし…… 」
実はYさん、働きながらコツコツとお金を貯めて整形をしていたのでした。とは言っても奥二重をちょっとくっきりさせたくらいの、いわゆるプチ整形です。

「プチ整形でも整形は整形よ。お金と医者の力でキレイになったんじゃん。まあ、彼がそれでいいならいいんじゃない? お幸せにー」
Sさんはそう言い捨ててその場を去りました。
「あの子結婚願望強いから、Yちゃんに先を越されてひがんでるだけだよ。気にしないでいいからね」
「ありがとう……」

両家顔合わせの日に……

そしていよいよ、彼が両親を連れてYさんの家に来る日になりました。Yさんはずっと実家暮らしで、今まで同僚を招いたことも何度かありました。

「こんにちは、おじゃまします」
「どうぞ、いらっしゃいませ」
彼と両親を部屋の中へ案内し、ご馳走を並べたテーブルを囲みます。彼とはもう長いお付き合いだったのでお互いの両親とは何度も会ったことがあるものの、両家で顔を合わせるのは初めて。
「さあさあ、まず乾杯しましょう」
どことなく緊張した空気の中、突然インターホンが鳴りました。
「あら、頼んでたケーキが来たのかしら? お茶の時間でいいって言っておいたのに…… ちょっと失礼」
Yさんのお母さんが財布を手に玄関へ向かいます。

「ちょっと、なんなんですかあなた!」
お母さんの悲鳴とともに、どたどたと廊下を歩く足音が響きます。
「え、なに?」
ただならぬ雰囲気に皆が立ち上がると同時に、大きな音をたててドアが開きました。
「……Sさん! どうして?」
そこに立っていたのはSさんでした。Sさんも以前遊びに来たことがあるのでYさんの家を知っていてもおかしくはありませんが、一体何故こんな時に現れたのかはわかりませんでした。

いきなり暴露

「どうしても何も、本当のことを教えてあげるために来たのよ。ねえご存知ですか? この子整形ですよ!」
Sさんが彼の両親に向けて、Yさんの顔を指さしながら言いました。

「あのー…… 」
口を開いたのはYさんの彼でした。
「それが何ですか? 僕らもう長いつきあいなんで、知ってますから」
「そうよ。私が信頼できる先生をご紹介したの、私もお世話になっているから」
彼のお母さんが言うと、Sさんの顔がみるみるうちに青ざめていきました。実はYさんは彼のお母さんに相談して、いつもレーザーで利用している美容外科を教えて貰っていたのです。
「ところで君は、誰かな? 勝手にこちらのお宅に上がり込んで、息子の花嫁さんになる人を傷つけたとあっては……ちょっと見過ごせないんだが」
今まで黙っていた彼のお父さんが、重々しく言いました。
「大事にしたくなければ、もう帰りなさい」
Yさんのお父さんが言いました。
「何よ、みんなして……!」
Sさんは入ってきたときよりさらにどたどたと足音を立てて家を出て行きました。

「あれじゃ美人も台無しだな…… 」
「ほんとですね」
「さあ、気を取り直して乾杯しましょう」
両親同士は何事もなかったように笑い合い、Yさんが謝ろうとするとそっと彼のお母さんに止められました。
「あなたは悪くないわ。前からとってもかわいかったけど、今はもっと素敵になって、それでいいじゃない」
「ありがとうございます……」

両家顔合わせは和やかな雰囲気で終わり、その後Yさんは無事に彼と結婚式を挙げることができました。

Sさんはといえば、Yさんのお家でしでかしたことが皆にバレるのを恐れてか、それ以降出社することもなく会社を辞めてしまったとのこと。しかも、それを誰も止めなかったそうです。

いくら生まれつき顔がきれいでも性格に問題があると、いざという時に誰も力になってはくれませんね。

ftnコラムニスト:緑子