褒め言葉のつもりでも、場合によってはその人を傷つけてしまうこともあります。知人は上司から立ち振る舞いのきれいさを褒められましたが、本人は複雑な気分を抱いてしまいました。その理由とは……?
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放任主義の親に育てられた知人女性

放任主義の親の元で育った知人は、躾らしい躾はされていませんでした。
育児放棄はされていなかったものの、冠婚葬祭のマナーや言葉遣い、正しいお箸の使い方などは教えられずに育ってきました。

子どもの頃は気にならなかったけれど、大人になるとマナー面は厳しい目で見られるもの。
彼女は、改まった場に1人だけデニムで訪れたとき「自分はもしかして常識を身につけていないのかも?」と気づかされたのだとか。
このままではいけないと危機感を抱き、本を読んだり周囲の人を観察したりして、自力でマナーを身につけました。

「親の躾がよかったんだね」と褒められたけれど……

就職後、きれいな立ち居振る舞いを見た上司は感心して「親の躾がよかったんだね」と彼女を褒めました。
また、「躾をしてくれた親に感謝しなくてはいけないよ」とも。

その言葉を聞いて、複雑な気分になった彼女。
「親のおかげじゃないのにな」と思いつつ、反論するのも変な空気になるので「ありがとうございます」とにこやかに返答しました。

先輩から意外な言葉が!

そのやりとりを近くで聞いていた先輩女性は、「親は関係ないですよ。そういうのは本人次第だから」と何気なく上司に言いました。
その先輩は知人の生まれ育ちを知っていたわけではなく、厳しい親の元で育った先輩自身が、親に反発して拒否をしたのだとか。
親が厳しく躾をしても、子どもが聞き入れないと身につかないことを実感していたようです。

躾は親の手柄? 本人の努力?

上司の言葉は悪意がないだけに、その瞬間はやりきれない気持ちになったそうです。
自分の努力を無視された気分になり、傷ついてしまった彼女。
先輩の言葉は自分が認められたようで救われた、と言っていました。

躾は親がするものだと思いがちですが、世の中にはそうではないケースもあるもの。
本人の努力を無視して親の手柄にすることは危うい、と考えさせられたエピソードです。

ftnコラムニスト:愉子