色々と忙しい同僚
Aさんは当時、小さな商社で働いていました。繁忙期以外は残業も少なく、人間関係も良いのでとても働きやすい職場でした。ただ、同僚のKさんだけは同い年で同期入社のAさんをライバル視していたのか、何かにつけてAさんに絡んでくるのです。
「Aさんってさ、全然飲み会とか来ないよね 」
Kさんは終業後に他の同期メンバーと一緒に飲みに行ったり、百貨店のバーゲンに行ったり、合コンを開催したりと何かと忙しい人でした。
「私、お酒飲めないから…… 」
Aさんはお酒の飲めない体質なので、いつも誘いを断っていました。
「お酒も飲まないしパァーっと買い物もしないし、カレシもいないって……Aさんって 何が楽しみで生きてるの?」
Kさんは度々Aさんにそう言って絡んできます。
「見て、私こないだの合コンでカレシできたの。イケメンでしょ?」
そう言ってスマホの画面を見せてくるKさん。
「そうね……」
「まあ私はAさんと違って視野が広いから、こういうイケメンとも付き合えちゃうわけよ」
「そう、良かったわね」
Aさんはにっこり笑って流しました。Kさんの人生の楽しみマウントは今に始まったことではなく、毎日のように行われているのですっかり慣れてしまったのでした。
まさかの大逆転
ある日Aさんが出社すると、会社の掲示板に辞令が掲示されていました。
「ちょっとAさん! すごいじゃん!」
別の部署にいる同僚たちがAさんの周りに集まりました。
「主任に昇格って、同期の中でも一番乗りだよ!」
「ありがとう、みんな」
なんとその辞令には、Aさんの主任昇格が書かれていたのです。
「なんでAさんなの!? 私だって同じ仕事してるのに!」
Kさんは納得いかない様子でAさんに詰め寄りました。
「私、仕事帰りにずっと資格の講座に通ってたの。昇格はその資格のおかげよ」
「え…… 」
実はAさん、Kさんが遊び回っていた終業後に、コツコツと資格の勉強をしていたのです。
その資格は今Aさんが手がけている仕事に非常に役に立つ資格で、取得するのにかなりの時間と勉強が必要とされる難関資格でした。
「何が楽しみで生きてるかって聞いてたっけ? 私、今みたいな瞬間を楽しみに生きてるの。
Kさん、私はこれからあなたの上司になるけどよろしくね」
きっぱりと言い切ったAさんに、Kさんはぐうの音も出ませんでした。
何を楽しみにするかは人それぞれ。自分と違う楽しみの人を馬鹿にしたり、マウントをとったりすると後で痛い目をみることもあるんですね。
ftnコラムニスト:緑子