住んでいる家を見て、相手の生活レベルを推測し、お付き合いするかどうかを決めるという人は少なくありません。しかし家を見ただけでは測れないものもあるはずです。今回はお姑さんに実家がボロイというだけでけなされた経験のある私の知人、Mさんのお話です。
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資産家の息子と結婚

Mさんが結婚をした相手は、そこそこ資産のある家の長男。いわゆるおめでた婚でした。
結婚をしてすぐに義実家で同居をすることになり、さっそく始まったのがお姑さんによる嫁いびりでした。

「もっといい家柄の人と結婚させるはずだったのに……」
お姑さんは何かにつけてMさんにそう言います。お姑さんはMさんがごく普通の家庭の娘であることが不満のようで、いちいちMさんの実家や両親をけなすようなことを言ってきます。

「子どもさえできなきゃ絶対反対してたわ! こんな貧乏くさい人、うちには釣り合わないわよ」
「すみません…… 」
Mさんは何か言われるたびに、子どものためだと耐えていました。

ある日Mさんは祖母の法事に出るために、同じ町内にある実家へ行くことに。義実家からはお供えも何も持たされなかったので、わずかに自分の自由になるお金でお供えを買いました。

「ただいまー。あれ、ドア開きにくいね」
実家は古いアパートで、築年数が長いためどこもガタが来ている様子。しかしMさんは自分が育った家なので思い入れが沢山あります。

「そろそろ引っ越さなきゃねえ…… 」
「そうだな、孫も産まれるし」
両親はにこにこと幸せそうにMさんのお腹を見つめ、体調を気遣いました。

「向こうのご両親とはうまくいってるのかい」
「うん……まあ、ね」
いびられているとは言えず、Mさんはあいまいに答えました

突然の帰省禁止令

法事を終え、家に戻ったMさんを待ち受けていたのは真っ赤な顔をしたお姑さんでした。
「ちょっとMさん! アナタしばらくご実家に帰るのはよしてくださる?」
「え、どうしてですか?」

「私のお友達が、ボロアパートに入っていくアナタを見たっていうの。お嫁さんはそんなみすぼらしい家の人とお付き合いがある方なの? って聞かれたわ! 嫁の実家ですなんて、恥ずかしくって言えやしない!」

「そう言われても…… 私、産後はしばらく実家に帰るつもりですし」
「ダメよ、ここにいなさい! ご両親にはたまに来てもらえばいいじゃないの」
「そんな……」
Mさんはお姑さんの言葉に深く傷つきましたが、言い返すことはできません。

お母さんからの電話

「M、お産の時は里帰りできるの? 色々用意しとこうと思うんだけど」
数日後、Mさんのスマホにお母さんから電話がありました。

「お母さん!」
Mさんはお母さんの声を聞いて、張り詰めた糸が切れたように泣き出してしまいました。
「実は…… 」

お姑さんに言われたことを全て話すと、お母さんは慰めてくれました。
「辛い思いをさせてごめんね、実はお父さんとお母さんは…… 」

電話を切った後、Mさんは勇気を振り絞り、旦那さんにお姑さんの暴言を訴えました。
「このままじゃ私、元気な子どもを産めないと思う。私、この家を出ます」
「M…… そんなひどいこと言われてたのか!? 俺のいない間に!」

お姑さんは旦那さんがいるときだけはMさんに優しく接していたので、旦那さんはMさんがいびられていることを知らなかったのです。

「近いうちにこの家を出よう。お前だけに辛い思いをさせるなんて耐えられない。家はすぐに見つけるから、もう少しだけ待ってくれ」
旦那さんの言葉に、Mさんは首を横に振りました。
「やっぱ待てないよな? でも住むとこを確保しないと…… 」

衝撃の事実

「違うの」
「え?」
「住むとこ、あるの」
「ん?」

Mさんは先ほどのお母さんからの電話の内容を旦那さんに伝えました。
その内容とは、実はお父さんもお母さんも倹約家で、ずっとコツコツお金を貯めていたこと。そしてそのお金でもう一軒家を買ってあるということでした。

「私を驚かせるために、黙ってたみたい。あなたも一緒に来てくれる? お父さんもお母さんもあなたを気に入ってるから、もし良かったら一緒に暮らそうって」
「もちろん!」

Mさんと旦那さんはすぐに荷物をまとめ、数日後には新しい家に引っ越しました。旦那さんの両親は猛反対したそうですが、旦那さんの気持ちは変えられませんでした。

2人は今もMさんの実家で暮らしています。子どもも無事に産まれ、新しいお家はとても賑やかだそうです。人を見た目や住んでいる家で判断してしまう気持ちもわからなくはないですが、それがすべてではないことがわかったエピソードでした。

ftnコラムニスト:緑子