最初は好意で……
ある雨の日、Rさんはスーパーでママ友のSさんにバッタリ会いました。
雨がひどくなってきているのにSさんは子連れで、しかも徒歩で帰ろうとしていたので、Rさんは車で送ってあげると提案しました。
「危ないから送るよ! チャイルドシートはうちの子のがあるし」
「いいの? ありがとう!」
Sさんはとても感謝している様子でした。
「車の免許があるっていいわねえ! 私免許ないから、車があっても休みの日しか使わないのよ」
「そうなんだ? 子どもが小学校に上がったら免許取ったら?」
「そうねえ……」
その日はそのままSさん親子を自宅に送って帰ったRさん。しかし翌日から、とんでもない事態に悩まされることになるのでした。
車の前で待ち伏せ
翌日、子どもを幼稚園に預けている間に買い物に行こうと家を出たRさんは、自宅の駐車場の前に誰かが立っているのに気づきました。
「あれ、Sさん…… どうしたの?」
車の前に立っていたのはまさしく、昨日自宅まで送ったSさんでした。
「今日はね、病院に行かなきゃいけないんだけど、駅前だからちょっと遠くて……」
そう言ってSさんは上目遣いでチラッとRさんを見ました。
「あ、送っていこうか? ついでだし……」
そう言わざるを得ない雰囲気に負けて、Sさんを病院まで送っていくことに。近くからバスが出ているのになあと思いながらも、断れませんでした。
「悪いわねえ、ありがとう!」
「いいわよ……」
スーパーとは逆方向だけど、と思いながら送り届けたRさん。するとSさんはこんなことを言い出しました。
「帰りは1時間後ぐらいになるから、よろしくね!」
「ええー!?」
なんとSさんは、帰りもRさんに迎えに来てほしいと言うのです。Rさんは今回だけ、と思いながら渋々了承し、1時間後にSさんを迎えに行ったのでした。
足に使ってくるママ友に、残念なお知らせ
「なんだか足に使われちゃってる気がするなあ……」
その日以降、Sさんは何かにつけてRさんの家の前に現れ、病院だ買い物だと車を出してくれと頼むようになりました。
車の前で待っているので断りづらい上に、乗せてあげたお礼はひとつもなくてなんだかモヤモヤするRさん。
その夜、悩むRさんに、突然旦那さんがある報告をしたのでした。
翌朝。
「あれ、今日は車ないの?」
Rさんが洗濯物を干しに庭に出ると、駐車場からSさんの声がしました。また来てたのか、と思いながらRさんは答えました。
「うん、旦那が車じゃなきゃ不便なとこに転勤になっちゃって…… これからずっと車通勤することになったの」
「え、そうなの? 困るわー」
「私も困るけど仕方ないわね」
なんでSさんが困るのか……と思いながら、Rさんは適当に話を合わせて家の中に戻りました。
驚いたことにそれからSさんがRさんの家に訪れることはなくなりました。
「都合よく足に使える運転手が欲しかっただけなんだろうなあ」とRさんはあきれ返りましたが、車の前で待ち伏せされることがなくなってほっとした様子でした。
その後、Sさんが車を持っている他のママ友を同じように足に使おうとしてもめごとになり、ママ友の中で孤立してしまったそうです。
人の好意にはせめて感謝を示したいもの。当然のように利用しようとしてはいけませんね。
ftnコラムニスト:緑子