中学生の時の経験談
これは、友人が中学生の時に経験した話です。
部活が終わり、後片付けを終えて自転車で帰宅していると、小さな子供の泣き声が聞こえました。
辺りを見ても子供の姿は見えず気のせいかと思ったんですが、なんとなく気になって戻ってみると、道路に面した家の玄関先に小さな男の子が座っているのが見えました。
「泣いていたのはこの子かな?」と入り口から様子を伺っていると、私を見つけて駆け寄ってきました。
玄関先で泣く子ども
男の子は私の足にしがみ付き、また泣き始めました。とりあえず玄関先に座らせて話を聞くと、お家に入れないと話してくれました。
念のためチャイムを鳴らしても音沙汰がなく、玄関ドアを確認すると鍵がかかっています。家の電気もついておらず、誰もいないようでした。
何歳か尋ねると小学校一年生とこたえてくれ、友達の家に遊びに行っていて帰ってきたら誰もいなくて泣いていたんだと教えてくれました。
暗くなり心細くなるけれど……
私と話しているうちに男の子はすっかり泣き止み、一緒にボールで遊ぼうと庭に連れていかれました。
しばらくボール遊びをしたりなわとびをしたりしましたが、一向に家の人は帰ってきません。
まだ携帯もない時代なので、今のように簡単に連絡を取ることもできず、私の親も心配しているだろうな……と思いましたが、辺りはどんどん薄暗くなっていきます。
男の子を一人置いて行き何かあってはいけないと思い、一緒にいようと決めました。
無事にお母さんにバトンタッチ
それからしばらくして、ようやくお母さんが帰宅。男の子と私を見て、「どうしたの!? えっと、あなたは?」と、とても驚いた様子でした。
じつはお母さんは予定になかった残業が入ってしまい、帰宅時間が大幅に遅れてしまったそう。
男の子には緊急事態に備えて鍵を渡しておいたそうなんですが、男の子はそのことをすっかり忘れてカバンの中に入れたままだったそうです。
何度も何度もお礼を言われ、ぜひお礼をしたいと言われたので住所と名前を教えて急いで帰りました。
母は帰りの遅い私を心配して、友人に電話をしているところでした。事情を話して何もなくてよかったとほっとした様子でしたが、心配したんだよと叱られました。
何十年も続く関係に
翌日、部活から帰ると昨日の男の子とお母さんが来ていて、私の母と笑いながら話をしていました。わざわざお菓子を持ってお礼を言いに来てくれたそうで、男の子からは私の似顔絵ももらいました。母は、これも何かの縁だから……と、二人をうちへ呼んで何度か食事をしました。
あれから何十年も経ち、もう会うことはありませんが、今でも年賀状のやり取りが続いています。
あの時感じた心細さとほっとした気持ちは、今でも覚えています。
困っている人がいたらそっと寄り添ってあげられるような人でいたいなと思います。
ftnコラムニスト:karira