子育てって孤独…
待望のベビーが誕生したばかりのAさん。とても幸せなはずなのですが、育児の孤独さに追い詰められてしまっています。寝てばかりと想像していた新生児は全然寝てくれず、話もできないためどうして泣いているかもわからない。
この辛さを仕事から帰ってきた夫と共有したくても、夫は仕事で忙しく話を聞いてくれません。夫の転勤でやってきたこの地には友達もおらず、Aさんはその孤独さに追い詰められるようになっていきました。
もう限界! 家出しよう
ある朝、Aさんが起きて朝ごはんとお弁当の準備をしていると、赤ちゃんが泣き出しました。夫は赤ちゃんの泣き声に気がつくこともなく眠っている中、Aさんは赤ちゃんをあやします。おむつを替えてミルクをあげても、赤ちゃんは泣き止みません。
「どうして泣くの?」
「なんで私だけが面倒を見なくちゃいけないの?」
頭の中がぐちゃぐちゃになったAさんは、「もうここにはいられない!」と衝動的に家を出ることにしました。家を出ても行くあてはありませんが、とにかく限界を迎えていて何か行動せずにはいられなかったのです。着の身着のまま、赤ちゃんをベビーカーに乗せ、どこへ行くでもなく歩いていきます。
家出先で素敵な出会い
外に出ると、不思議と赤ちゃんは泣き止みます。Aさんはこれまで通ったことのない道をズンズン歩き、知らない公園にたどり着きました。
そこで声をかけてくれたのが、優しそうな雰囲気のおばあさんです。
「かわいいわね〜」
優しく声をかけられたことで張り詰めていた気持ちの糸が切れ、Aさんは初対面のおばあさんに不安な気持ちを打ち明けてしまいます。
いつも泣いてばかりで母親として失格なのではと思ってしまうこと、孤独を感じて不安に押し潰されそうになってしまうこと……。泣きながら話すAさんを、おばあさんはしっかりと受け止めてくれました。
大丈夫、この子は幸せよ
「今日出会ったばかりだから詳しいことはよくわからないけれど、この子が幸せそうなのは顔を見るだけでよくわかるわ。それってあなたがきちんと育児をしているからよ」
おばあさんのかけてくれた言葉が嬉しくて、Aさんは涙を流していました。そして「孤独なら私とお友達になりましょ」と言われ、おばあさんの家でお茶をすることに。
温かいお茶を飲んで、話を聞いてもらっていると、Aさんはすっかり元気を取り戻していました。家出をした時は絶望的な気分でしたが、こんなにも素敵な出会いができて、Aさんはこれからの生活や子育てにもやる気が湧いてくるのでした。
夫も起きて妻子がいなかったことにびっくりして、以前より話を聞いてくれるように。追い詰められての家出は、Aさんの生活をいい方向に変えてくれたのでした。
ftnコラムニスト:安藤こげ茶