ベランダがお気に入りの娘
娘が歩きはじめた頃、わたしの後を追ってベランダまで出てくるようになりました。
我が家のベランダは横に長く、一部は柵ごしに外が見える造りになっています。
娘はその柵の間から見える景色がお気に入りで、毎朝、わたしが洗濯物を干している間、景色を眺めたり、覚えたての言葉を発してみたりと、楽しそうにしていました。
わたしが朝の洗濯物を干す時間とベランダで育てているお花に水やりをする時間を、娘はお気に入りのベランダに出られるため楽しみにしていたのです。
おばあさんとお友達に
後追いをしてベランダに出てくるようになった頃、どんどんと新しい言葉を覚えていく時期でした。
その言葉を使いたいのか、娘は家の前の散歩道をよく通るおばあさんに向かって「こんにちは〜」「こっちこっち〜」などと言って手を振っては、愛想を振りまくようになったのです(笑)
そのおばあさんと娘は、次第に毎朝のように声を掛け合う仲になっていきました。
おばあさんは、ベランダにいる娘を見つけると「◯◯ちゃ〜ん! おはようさん」といつも笑顔で言ってくれるのでした。
娘も「まだかな〜?」とそのおばあさんをいつしか待ちわびるように。
世代を超えた交流が微笑ましかったです。
お花をちぎった娘
ある日、いつものように洗濯物を干しにベランダへ出ると、決まって娘も後からついてきました。
しかし、その日は柵の方へは行かず、わたしが大事に育てているチューリップをブチッと力強くちぎってしまったのです!
「え〜! なんでちぎったの?」「やっとキレイに咲いたのに! なんてことすんの!!」と咄嗟に大声で怒鳴ってしまったわたし。
その怒声にびっくりして、娘は大泣きしてしまいました…
娘は、わたしがチューリップを大事に育てていることを、小さいながらも理解していたと思っていたのですが……。
しかし、この後わたしは、思いもよらぬ娘のやさしい気持ちを知ることになったのです!
イタタのおはな?
チューリップをちぎった理由を、娘が泣き止んでからやさしく聞いてみました。
すると、たどたどしい言葉で娘はこう言いました。
「おばあちゃん、イタタのおはな」「イタタあっちいけ」
その時はあまり意味が分からなかったのですが、そのすぐ後にいつものおばあさんが通りました。見ると、おばあさんは手に包帯を巻いていたのです。
聞いたところ、包帯は昨日から既に巻いていたようなのですが、わたしは気付いていませんでした。
そこでわたしは、ようやく娘が言った言葉の意味が解ったのでした!
娘は、昨日手に包帯を巻いていたおばあさんを見て、お見舞いにチューリップを渡してあげたかったのだと……。
いつも通り、声を掛け合う2人の間に割ってはいったわたしは「ちょっとだけ待ってくださ〜い!」と言い、娘と新聞紙で包んだチューリップを持っていくことに!
娘は嬉しそうに「はい、どうぞ!」と言っておばさんに渡したのです。
おばあさんは、もの凄くよろこんでくれましたし、わたしは娘をとても誇りに思いました。
娘がこれからも変わらず、人を想うやさしい気持ちを持って成長していきますように……。
ftnコラムニスト:さらら