子供たちが楽しく遊んでいる公園で
小学校に入学したばかりのA子の息子(D君)は、やんちゃ坊主でいつも公園で走り回っています。
その日も近所の友達と、公園で遊んでいました。
A子は少し離れたベンチに座り、D君たちを見守っていました。
D君たちは、公園の端から端まで走り回っては、時々子供同士で口喧嘩をして、また走ります。
穏やかな時間が過ぎていきました。
すると……。
滑り台の下で遊んでいた2歳児
滑り台の下で、2歳くらいの女の子が砂にお絵描きをしていました。
まだ小さいのに、お母さんから離れて遊んでいるのが気になり「お母さんはどこにいるのだろう」と目で探してみることに。すると、公園の端のベンチに座っている女性を見つけました。
(あの人がママかなあ~)
(でも、さっきから携帯ばかり触っているし)
A子がD君たちから目を離したその時です。
女の子が急に「わぁ~! ママ~!!」と泣き出し、ベンチに座っている女性のところに走っていきました。
見知らぬママが激怒! 何があったの?
何があったのだろう。
D君たちも鬼ごっこをやめて、何やら話し合っています。
すると、ベンチで携帯を触っていた女性が、泣いていた女の子を連れてやってきました。
「あのぉ! あの子あなたの子供ですか!?」
「お宅の子が、うちの娘を蹴って滑り台の上から突き落としたんですよ」
「ちゃんと見てましたか!?」
突然まくしたてるように怒りだすママ。
A子は突然のことで「あ……すみません」と言ってしまったそうです。
でもよく考えると、女の子は滑り台の上にはいなかった。
滑り台の下で砂遊びをしていたはず。
(見ていなかったのは……私じゃなくてそっちだろ!)
A子が反論しようとしたところ、私たちに向かって、息子と一緒にいた少年たちが走ってきました。
心強い小学生たち!
少年たちは、女の子ママに向かって、
「おばちゃん! D君は蹴ってなんかいない」
「そうだよ! 女の子は滑り台の上にいなかったよ」
と、物怖じせず、次々と反論していくのです。
A子も心の中で「確かに、女の子は滑り台の上にはいなかったよね」とつぶやきました。
続けて少年たちは、
「滑り台の下で砂遊びしてて、あぶないなぁ~って皆で言ってたんだよ」
「D君が滑って、下にいた女の子に確かに当たったけど、蹴ってなんかいない!」
「それにね、D君はちゃんと女の子に謝ったよ。ごめんねって謝ってた」
と、A子の息子を庇うような証言をしました。
そして携帯ばかり見ていたママは最後の一撃をくらいます!
「おばちゃん、携帯ばっか見てたじゃん!」
最後の一撃が効いたのか、
女の子ママは触っていた携帯をポケットに入れ、ぶつぶつ言いながらお子さんと帰っていきました。
ヒステリックママを成敗してくれたのは、小学生集団だったのです。A子とD君にとって、彼らは小さなヒーローに見えたことでしょう。
後日、私はA子からこの話を聞きました。
女の子のママは、今も公園に来ているのかと聞くと
「来ていないよ。でも、挨拶してきたら挨拶はするつもりだよ」
と、A子は言いました。
女の子に怪我がなかったのが幸いですが、公園に限らず、幼い子どもから極力目を離してはいけないなと改めて感じるお話でした。
ftnコラムニスト:立花彩夏