突然のゲリラ豪雨
その日、Aさんは4歳の娘と一緒に公園で遊んでいました。そして家まで歩いて帰っていたところ、突然の雨が……。ゲリラ豪雨です。
一瞬にして、どしゃ降りの雨になり、傘を持っていなかったAさんはそのまま雨宿りすることに。
民家の軒下で、娘と並んで雨が止むのを待っていました。
雨は止まず……
「お母さん、寒い……」
そんな言葉を聞き、娘を抱きしめてなんとか温めるAさん。
10分ほど雨宿りをしましたが、雨が止む気配は一向にありません。それどころかどんどん雨脚は強くなっていきます。
娘を抱きかかえて、ずぶ濡れになりながら走って帰るしかないかな……。
Aさんがそう思ったそのときでした。Aさんたちの前に1台の車が停まったのです。
嫌な予感
停まった車は黒塗りで、なんだか怖そうな感じ……。Aさんは嫌な予感がしました。
運転席の窓が下がり、1人の男性が顔を覗かせます。そしてAさんは驚くことになります。
なんとその男性は、スキンヘッドでヒゲを生やし、サングラスをかけたとてつもなく強面の男性だったのです。
男性が口を開く
身の危険を感じ、思わず娘を抱きしめるAさん。娘もその男性を見て、怖がっていました。
そしてその男性が、Aさんたちに向かって言葉を発します。
「これ、使ってください」
なんと、男性はそう言って、ビニール傘を差し出してくれたのです。
突然の言葉に、怯えていたAさんは「あっ、えっ?」という言葉しか発することができませんでした。そして言われるがままビニール傘を受け取ります。
すると「じゃあお気をつけて」と男性は言い残し、そのまま窓を閉じます。
そこでAさんも我に帰り、「あ、ありがとうございます!」となんとかお礼を言うことができました。そして車は颯爽と走り去っていったのです。
見た目のイメージで怖そうな人だと決めつけてしまったAさん。「見た目で決めつけるのは良くないな」と反省しながら、ビニール傘を指して、娘と一緒に家に帰ったそうです。
赤の他人のためにビニール傘を渡してくれるなんて、素敵な男性ですね。心温まるエピソードでした。
ltnコラムニスト:ふくろうクジラ