息子と2人で電車に
主婦のAさんはその日、実家に行くために小学1年の息子と電車に乗っていました。旦那がいないときはいつも、電車で実家に行くのが恒例です。
その日は冬休みということもあり、電車はかなりの混雑ぶり……。
座る席もなく、Aさんと息子は2人でドアのそばに立っていました。
途中の駅で停車し……
途中の駅で電車が停車すると、さらに人が乗車してきます。
「離れないでね」Aさんは息子にそう言います。するとそこでアナウンスが……。そのまま5分間、停車してから発車するという内容でした。
Aさんは小さなため息をつき、5分待ちます。そして5分後、音を立てて電車のドアが閉まり、息子に「もう少しだからね」と声をかけようとしたところで気づきます。
なんと、そこにいるはずの息子が姿を消していたのです。
息子はどこに?
息子の姿が見えず、ゾッとするAさん。辺りを見渡すのですが、どこにも息子の姿がありません。
しかしそこでようやく息子の姿を発見します。息子を発見したのは、窓の外に見える駅のホーム。
なんと息子はいつの間にか、電車の外に出ていたのです。
「ちょ、開けて! 息子が外に!」ドアをドンドン叩きながら、Aさんはそう叫びます。
しかしその言葉が車掌に届くことはなく、電車は走り始めてしまったのです。
駅のホームに行くと……
息子がたった1人、駅に取り残されてしまった……。
もしも誰かにさらわれたら。何か危険なことがあったら。Aさんは悪い想像ばかりしてしまいます。
そしてAさんはすぐに次の駅で降車。タクシーに乗って、前の駅まで急いで戻りました。
駅のホームに到着。すると、意外なことが……。
なんと息子の笑い声が聞こえてきたのです。
そこに目をやると、ベンチに座る息子。そして隣には1人の女子高生がいました。
話を聞くと、その女子高生は電車の中で慌てるAさんの姿と息子の姿を見て、状況を察したとのこと。Aさんが戻るまでの間、息子の相手をしてくれていたのです。
「ありがとう! ホントにありがとう!」Aさんは女子高生に何度もお礼を言います。そして謝礼を渡そうとしたのですが、「本当に大丈夫ですから」と断られてしまいました。
息子に手を振りながら帰っていく女子高生を目で追いながら、Aさんは「最近の子はしっかりしてるなぁ」と思ったそうです。
子供が1人で駅に取り残されてしまったら、かなり焦りますよね。優しい女子高生には感謝してもしきれません。
ltnコラムニスト:ふくろうクジラ