今回は超ブラコン義姉に苦戦した私の職場の先輩、Nさんのお話です。
絶縁されていた義姉
Nさんは当時、旦那さんと義実家で暮らしていました。最初は義両親と同居していましたが、2人とも不幸な事故で亡くなってしまい、広い義実家で2人暮らしをすることになったのです。
旦那さんには2つ年上のお姉さんがいるようでしたが、奔放な性格で問題ばかり起こすことから、義両親に絶縁されています。
「姉ちゃんのことは死んだと思ってる」
そう言いつつ、自分の結婚式や義両親のお葬式、法事の度に旦那さんはお姉さんに連絡をしていました。しかし一度も顔を見せたことはありません。
しかしある朝、義実家のインターホンを乱暴に何度も鳴らされてNさんと旦那さんは目覚めました。
「誰……?」
モニターには派手な格好をした1人の女性が映っています。旦那さんは驚いたように言いました。
「姉ちゃんだ!」
「え、お義姉さん!?」
強引に同居することに
「あんたが嫁? ふーん、ここはあたしの実家でもあるんだから、しばらくいさせてもらうわよ」
義姉は挨拶もそこそこに、大きなバッグを玄関に置いて言いました。
「今までどうしてたんだよ、姉ちゃん!?」
「あちこち渡り歩いてたんだけど、あんたに会いたくなったのよ」
義姉は旦那さんを見るなり甘えた声で言いました。
「元気そうで良かったわ、嫁はブスだけど」
心無い言葉に、Nさんは耳を疑いました。
「ひどいぞ姉ちゃん、俺の奥さんに」
「何よ、本当のことじゃない。結婚するならあたしみたいにちょっとはマシな女にすれば良かったのに。まあいいわ、あたしの部屋まだある?」
勝ち誇ったように義姉は言い、かつて義姉が使っていた部屋にさっさと上がり込んでしまいました。
「ごめんな、勝手な姉ちゃんで……」
「いいのよ、たったひとりのお姉さんなんだから」
そうは言いつつ、Nさんは不安を隠せませんでした。
さらば、ブラコン義姉
それから義姉は義実家に居ついてしまい、Nさんを家政婦のように扱う日々が始まりました。しかも義姉は超がつくほどブラコンで、Nさんの旦那さんが家にいるときはべったりと横にはりついています。
「ちょっと、この料理まずくない? こんなもの弟に食べさせないでよ」
「あんたみたいな女はうちの弟にふさわしくないわ」
などと、心無い言葉をかけられる毎日。しかも義姉は家事もせずにぶらぶらしていて、たまにNさんにお金をせびってはどこかに飲みに行ってしまいます。
「姉ちゃん、働いて家にお金入れてくれよ」
旦那さんがそう言っても聞く耳を持ちません。
「それならNさんを働かせたらいいじゃない、暇そうにしてるんだから」
自分は家のリビングでダラダラしておいて、1人分増えた家事に追われるNさんを顎で使います。その代わり旦那さんには甘く、なんやかんやとそばにいて世話を焼きたがるので、Nさんは旦那さんとゆっくり話すこともできませんでした。
「何なのあの人!? もう限界……!」
Nさんは義姉にいびられる日々に嫌気がさし、義姉が飲みに行った隙に旦那さんに訴えました。
「俺も限界だよ……」
旦那さんも義姉につきまとわれる生活に疲れていたようで、2人は久しぶりにゆっくり話し合いました。
「ちょっと、どういうこと!?」
義姉が義実家に帰ってきてからちょうど3ヶ月経過した頃。いきなり義実家に引っ越し屋のトラックが来て、義姉は驚いて声を上げました。
「俺たち出て行くんだよ。じゃあ姉ちゃん、この家よろしく」
「はあ!?」
旦那さんとNさんは義実家を義姉に譲り、新しく部屋を借りていたのでした。
「聞いてないわよ、ちょっと! どこに住むか教えなさいよ!」
義姉はそう喚き散らしていましたが、旦那さんは何も答えませんでした。
「子どもの頃は美人で面白くて、自慢の姉ちゃんだったのにな……」
車が走り出し、義実家が見えなくなったころに旦那さんは呟きました。子どもの頃はとても仲が良かったそうですが、大人になってもべったりひっつかれては鬱陶しかったのでしょう。
Nさんと旦那さんはそれから一度も義姉に会っておらず、連絡もとっていないとのことです。
ftnコラムニスト:緑子