子連れの帰省は一苦労
数年前のことです。
わたしは幼児2人を連れて3人だけで、夫の実家に帰省することになりました。
当時は地方の小さな町に住んでおり、夫の実家がある関西への帰省は一苦労です。
しかも、わたしは田舎育ちのため都会の大きな駅には慣れていませんでした。
エスカレーター前でトラブル発生
関西のある駅でエスカレーターに乗ったときのことです。
乗る直前、下の子がぐずりはじめて「乗りたくない!」と言い出しました。
エスカレーター前は混雑しているので立ち止まるわけにはいきません。
わたしはすぐに子どもを抱きかかえ、急いで飛び乗りました。
しかしその瞬間に、上の子の手を離してしまったのです。
娘はエスカレーターの前で呆然としたまま、わたしたちを見つめています。
「あっ。やばい」と思った途端に、娘はエスカレーターの前で泣き出してました。
このエスカレーターはとても長いうえに、途中が平面になるので、乗っている間に娘の姿が見えなくなります。
本当に、不安でたまりませんでした。
親切な女性たちの神対応
すると反対側の降りに乗っていた女性たちが、わたしたちの状況に気づいてくれました。
彼女たちはホームに着くと、娘に声をかけて一緒にエスカレーターに乗ってくれたのです。
このとき、女性たちが本当に女神様に見えました。
「あぁこれで大丈夫」と安心したのを覚えています。
子育て中の親切はとくに嬉しい!
女性たちは、エスカレーターに乗っている間、ずっと「ママはあそこにいるよ。もう少しで会えるからね」と声をかけてくれていたようです。
上に着くころには、子どもはすっかり泣き止んでいました。
わたしは、女性たちに「ありがとうございます」と何度も頭を下げました。
すると「ママも頑張ってね。お嬢ちゃんもしっかりママの手を握ってね」と娘の頭をなでて降りのエスカレーターに乗っていきました。
わたしは2人の姿が見えなくなるまで、またペコペコと小さく頭を下げつづけました。
子育て中に見知らぬ方から受けた親切ほど嬉しいものはありません。
10年近く前の出来事ですが、今でも思い出すと温かい気持ちになります。
この女性たちのように町中で困っている人を見かけたら、積極的に声をかけていきたいですね。
ftnコラムニスト:広田あや子