裁縫が苦手な妹
妹は昔から裁縫だけはとても苦手でした。
その妹が母になり、子どものために初めて裁縫をして作ったのが、キルト生地の手提げカバンです。
縫い目は荒くガタガタだったのですが、我が子が好きなキャラクターまで手作りしてあげたのだとか! もちろん出来栄えは完璧とはいえないもので、外で使うにはちょっとブサイクだったかもしれません。
けれど、妹は子どものためにと一生懸命作りました。
甥っ子のお気に入り
妹が作ったカバンはお世辞にも見栄えが良いとはいえなかったのですが、甥っ子はとても気に入っていました。
3歳の頃から持ち始めて3年目の年長さんの頃でもまだ、大切に使ってくれていたのです。
けっこう汚れも目立って、キャラクターの顔も黒ずんできていたのですが……。
なぜ、そのカバンがそんなに好きなの? と聞くと甥っ子は「僕しか持っていないカバンだから! ママからのプレゼントだし。」と嬉しいそうに話してくれました。
勝手に捨てた義母!
ママからの手作りのカバンを、いつも玄関のフックに掛けていた甥っ子。
ある日、義母が遊びにきたそうなのですが、そのカバンを見て「こんな汚いカバン持たせて! 新しいの買ってあげなきゃ!」と思ったらしく、勝手に持ち帰って捨ててしまったのだとか!
妹と甥っ子に確認もせず……。
2人は、翌朝になって玄関のカバンが見当たらないことに気が付いたのだそうです。
昨日の夕方までは家にあったのは確かだし……まさかとは思ったけど、妹は義母に連絡!
すると義母は「あのカバン? あまりにも汚いから捨てたわよ!」「あれはみすぼらしすぎて、孫がかわいそうよ! 新しいの買ってあげるからね!」と義母……。
悪気はないのかもしれませんが、勝手に人の物を捨てるなんてあまりにも乱暴です。
甥っ子の報復
妹はともて悲しく思ったのですが、悪気のない義母に対してキツく言うことはしませんでした。
しかし! 妹の甥っ子は大事な宝物を勝手に捨てられて大激怒。
怒った甥っ子は、歩いて20分の義母宅まで1人で向かったそう。ズンズンと家の中に進むと義母のお気に入りのカバンを手に取ります。
「おばあちゃん、この鞄ずっと使っててボロボロでしょ。捨てていいよね?」
しどろもどろになる義母と、事情を知らない義父。詳しく話を聞いた義父は、義母の非常識な行動に激怒しました。
その後義父は、義母と甥っ子を連れて妹に謝りに来ました。
義父は自分の孫の行動に感動して、【母親が作ってくれたカバンを何年も大切に使う子ども】がたまらなく可愛く感じたのだとか!
義父から怒られた義母は、ようやく自分のしたことの愚かさに気付いたのだそう。
義母はゴミ袋からカバンを拾って洗濯し、きちんと甥っ子に返して謝罪をしに来てくれました。
他人からはボロボロに見えても、誰かにとっては宝物かもしれません。勝手な決めつけはいけませんね。妹はそれからも甥っ子のために裁縫の腕を上達させようと、試行錯誤しているようです。
ftnコラムニスト:さらら