私には2歳上の先輩がいました。女性としても社会人としても尊敬していた彼女が大好きです。中でも一番印象に残っているのは、A子さんの退職スピーチです。その場にいた女子社員は恐らく全員涙していたと思います。今日は私が尊敬する先輩A子さんのお話です。
ftnews.jp

A子さんが退職する

A子さんは私より2歳上。最初は先輩なので、話すときも大変緊張しました。
でも話してみると気さくで、少し天然のところがあり社員の殆どが彼女のことが大好きでした。

そんなA子さんが、退職をすると聞いたときはとても寂しかったです。

退職を知った社員は、A子さんの送別会を催しA子さんはそれに参加。
でもその送別会は、A子さんにとっては嬉しいけれど大変でした。

今日はこの部署、明日はこの部署。毎日いろんな部署やサークルに呼ばれての送別会。
3ヵ月の間で彼女が参加した送別会はいったいいくつあったのでしょう。

彼女の人徳だったのか、こんなに多くの送別会があったひとは過去に事例がないと
今でも伝説になっているほどです。

そして彼女の退職の日が近づいてきました。

退職スピーチでA子さんは何をした?

A子さんの退職の日。私は代表で花束を購入。
はなむけの言葉も準備し緊張していました。

そして始まったA子さんの退職スピーチ。
マイクの前に立ち、彼女は深く一例をする。

するとチラっと1人の男性社員を見ました。
そして彼を手招き、最前列に移動するように促しました。

彼は聴覚に障害があります。

相手の口の動きで内容を読み取ることができるので、移動してもらったのかと
社員全員、そう思っていました。

しかし、A子さんが話し出すと胸が熱くなり、私は持っていた花束をぎゅっと握りしめたことを
覚えています。

聴覚障害の彼のため手話で挨拶をしたA子さん

A子さんは、簡単な手話ができるひとでした。
手話の本を購入し、少しずつ彼のために手話を覚え実践。

それを見て、女子社員の殆どが手話の本を購入する。
そんなすばらしい会社でした。

誰かのために起こす行動が、こんなに幸せになるんだと私も大変勉強になった一件です。

そして始まったA子さんのスピーチ。

A子さんはゆっくり話ながら、両手を動かす。
チラッと男性を見る。男性は小さく頷く。

その2人の空気感が社員全員を引き込む。

スピーチの内容は簡単ではありませんでした。
きっとA子さんは、この日のために手話をたくさん勉強したのだと思います。

スピーチが終わったころには女子社員殆どが涙を流していました。

彼女の押し付けない優しさが、私の心を突き刺したすばらしい思い出です。

ftnコラムニスト:立花彩夏