いつも彼と二人きり
私が勤める飲食店は、夕方から深夜まで営業している小さなバーのようなお店です。従業員は私一人だけで常に店主と私の二人きり。そこで私は店主の男性と不倫をしていました。定連さんには不倫の事情を知っている方もいれば、夫婦だと勘違いしている方もいました。
お店ではいつも開店から1〜2時間ほど彼と二人きりで本当に幸せな時間でした。私は本当に夫婦になったらこんな感じかなと、浮かれた気持ちで働いていました。
定連さんは「マスター、奥さんいるのにいいの? こんな若い子と一緒にいて」などと、冗談交じりに行ってくる人もいました。しかし中には「あ! 奥さん、久しぶりだね!」と声をかけてくれる方も。
そこへやってきたのは
彼はいつも否定も肯定もせず、私たち二人は疑似夫婦の時間を楽しんでいたのです。
そんなある日、彼の奥様が突然やってきたのです。彼も知らなかった様子で、かなり慌てて私に今日は帰るようにと言ってきました。しかし奥様が、
「いつも働いてくれてありがとう」
「これお礼に。食べて」
と言って、お菓子を差し入れしてくれました。私の表情が固まり明らかにおかしかったのでしょう。奥様は不思議な顔をされていました。
そこへ、なんと勘違いの常連客が現れたのです。
「奥さん! こんばんわ~」
「おたくら二人、いつも仲がいいからうらやましいよ。うちなんかさ・・・・」
と、話しはじめたのです。
逃げる常連
彼も固まり、世界の終わりみたいな顔をしていました。私も同じく逃げられない状況に、どうすることもできず・・・。
「あれ・・・。あ! ちょっと用事を思い出したかな~」
すべてを察して、逃げ出す客。
奥様は、罵詈雑言の嵐で大暴れ。グラスを割りお菓子を投げつけ、彼に水を大量にぶっかけて出ていきました。彼との関係は終わり仕事まで失い、不倫の代償は非常に大きかったです。
ftnコラムニスト:鈴木まさ美