家族に捧げてきたつもりだった30年間
女遊びもせず、ギャンブルもしない。酒もタバコも嗜まず、唯一の趣味といえば、休日に1人で出掛けて海釣りをするくらい。それ以外は朝から晩までひたすらに働き、そのお金で家族を養ってきたのだとKさんはいいます。「楽ではなかったが、家族がいると思えば乗り越えられた。」そんな生活を続けていたら、気づけば30年が経っていたのだそう。
机の上に置かれた『離婚届』
「私と別れてください。」頭を下げ、Kさんにそう懇願したのは、長年寄り添ってきたはずのKさんの奥さんでした。突然の出来事に、目の前が真っ白になるKさん。家族の為に人生の大半を捧げてきたKさんにとって、家族とは自分の人生そのもの。そんな自分から家族を取り上げられてしまったら、何も残らない。当時のことを振り返るとKさんは、「この世の終わり。まさに青天の霹靂のような出来事だった。」と話していました。
「おい、飯。」離婚の理由がわからない
奥さんから渡された離婚届。しかし、Kさんには、離婚の原因がわからなかったのだそうです。
そのことを率直に奥さんに伝えると、奥さんは一言、「おい、飯。」と言い放ったのだそう。
その一言で、Kさんは全てを理解したのだと言います。
言葉はいらない、信頼しているからこそ
いわゆる亭主関白だったKさん。言葉数も少なく、無愛想だったKさんは、奥さんや子供達との会話も多くはなかったと言います。それは、愛していなかったからではなく、心の通った家族であるからこそ、必要最低限のコミュニケーションで済ませてしまおうと考えてのことでした。
しかし、Kさんと奥さんたちとの間には、大きな齟齬があったようです。その齟齬が30年間蓄積され続けてきた結果が、今回の離婚でした。頭を下げ、Kさんの顔を見ようとせずに、震える声で離婚を懇願する奥さんを前に、Kさんは自分が犯してきた過ちの大きさに気付かされたのだと言います。
いかがだったでしょうか。
Kさんにとっても、辛く悲しい出来事だったと思いますが、同じように、離婚という決断を余儀なくされてしまった奥さんも、とても辛かったはずです。
お互いに気心の知れた、信頼できる間柄であるからこそ、夫婦、家族間のコミュニケーションは大事にしていかなければいけないですね。
ftnコラムニスト:翠夏