転勤で社宅暮らしになったA子
これは私の知り合いから聞いた話です。
A子は、食品を扱う企業に勤める彼と結婚しました。全国に支店や関連会社があり、定期的に各地方に転勤にしなければなりません。
A子の夫は研究にかかわる部署で働いていましたが、辞令が出て東京本社から九州地方への転勤が決まりました。A子は夫について行き社宅で暮らすことになりました。
社宅には妻のカーストが存在
30世帯ほど入居している社宅では、夫の会社での役職がそのまま妻の社宅でのランク付けに反映されていて、まるで昭和の雰囲気。上司の妻であるボスママが君臨していて、取り巻きの奥様たちを従えているようでした。
A子ももちろん手土産を持参して挨拶をして回りましたが、本社から飛ばされてきた研究職といった扱いで、営業にくらべるとかなり下の方にランク付けされました。
ボスママに見下されるA子
社宅ではしょっちゅうランチ会やお茶会が開かれていて、A子も最初の方は頑張って参加していましたが、慣れないことに疲れてしまい参加しないことも多くなりました。
ボスママはそれがおもしろくなかったようで、ゴミ出しなどで顔を合わせると嫌味を言って来たり、取り巻きの人と聞こえるように「利益も出さない研究職なんて、給料泥棒じゃない」など悪口を言ってくることもありました。
本来なら、ボスママたちのご機嫌をとって円滑に過ごすことが妻の役目だと思いますが、夫からは「無理に付き合わなくてもいい。この〇〇プロジェクトが終わればまた本社に戻れるから」
と言われていたので、なんとか耐えていました。
夫のプロジェクトが大成功
ある日、外出先で取り巻きの奥さんの一人とばったり遭遇。話しかけるべきかとまどっていると、向こうから駆け寄って話しかけてきました。
「もしかして、A子さんの旦那さんって、社長から〇〇の研究を指示されてるプロジェクトチームの人?」
その通り、A子の夫は社長直々の研究チームのリーダーでした。なぜ知っているのか不思議でしたが、そうですと告げると、その奥さんは青ざめてこれまでのことを謝罪してきました。
プロジェクトは大きな成果を上げていて、社長直属の部署に昇格するらしく、奥様たちのランクで言えばボスママを越えるというのです。
A子はそもそもマウント合戦に興味はなかったので、「気にしないでください」とその場をあとにしました。
カーストトップがA子に!
翌日、外出しようとロビーに降りると、いつものボスママと取り巻きの奥様方が集まっていました。A子の姿を見つけると、取り巻き達が口々に謝罪をしたり褒めちぎったりしてきました。
まさにカーストのトップが入れ替わった瞬間でした。
しかしA子はその後も社宅で他の人と絡むこともなくひっそりと暮らし、本社に戻るまで奥様たちと関わることもしませんでした。
思いもよらぬ形でマウント上位になったA子ですが、
「ランクとかマウントとかほんと面倒。夫は夫、私は私よ」
とぼやいていました。
自分をしっかり持っている人って強いですね!
ftnコラムニスト:karira