優しくされたら好かれていると勘違いしてしまう、という人はたまにいますよね。自分が精神的に弱っている時は特にありがち。今回は私の幼馴染Fさんが経験した、旦那さんがママ友に優しくしたら勘違いされてしまったというお話です。
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旦那さんとケンカしたママ友

Fさんは、旦那さんと小学生の子どもの3人家族。子どもが小学校に上がってからママ友が増えて、中には家族ぐるみで仲の良いママ友もいました。

ある夜Fさんの家に、「旦那とケンカしちゃったからちょっといさせて……」と、仲良しのママ友Cさんが子どもを連れてやってきました。
「いいよ! さあ入って!」
よほど激しいケンカだったのか、Cさんは目を真っ赤に泣きはらしています。子どももただならぬ様子を感じ取っているのか、緊張した顔つき。
「2人とも今日は泊まっていったら? 明日学校休みだし。パジャマ貸すよ」
旦那さんはそう言ってCさんの子の手を引き、子ども部屋へと連れていきました。
「ありがとう……」
Cさんはほっとした様子で、ソファに腰を下ろしました。
「Fさんちは旦那さんが優しくていいな……」
Cさんの旦那さんはいわゆる亭主関白で、家事や育児にはノータッチ。今日もそのことが原因でケンカになったようでした。
「大変だったね」
FさんがCさんからケンカのいきさつを聞いていると、旦那さんが子ども部屋から戻ってきました。
「Cさんお酒飲めるんだっけ? ちょっと付き合ってくれない?」
「うん、ありがとう……」
旦那さんが缶ビールを開けて渡しました。Fさんがお酒を全く飲めない体質なので、今までも家族同士で集まったときは、Fさんの旦那さんとCさんがよく一緒にお酒を飲んでいました。
「じゃあ私先にお風呂入ってくるね!」
Fさんは、旦那さんとCさんを居間に残してお風呂に。旦那さんはCさんの話を優しく聞いてあげていました。

急な呼び出し

翌日、落ち着いたCさんは自宅へ戻りました。その日は家族全員お休みだったので、Fさん一家が自宅でのんびり過ごしていると、急に旦那さんのスマホが鳴りました。

「ん? Cさんだ」
「え、なんで?」
「わかんない、なんだろ……」
旦那さんはとりあえず、その場を離れ電話をしに行きました。いくら連絡先を知っているとはいえ、いつも用事があるときはFさんに連絡をするはず。Fさんはなんだかあやしい、と感じました。そういえば昨日Fさんがお風呂から上がると、2人はずいぶん親し気に話していたな、なんて。

「Cさんなんだって?」
戻ってきた旦那さんに尋ねると、「〇〇ホテルに呼び出された」と旦那さんは首を傾げています。〇〇ホテルは近所にあるシティホテル。Cさんはまた旦那さんとケンカをして家出でもしているのでしょうか。
「なんであなたに?」
「なんか話があるみたいだから、ちょっと行ってくるよ。一人で来てって言われたんだけど一緒に来るよね? 万が一だけど、誤解されるようなことがあったら困るし」
「うん……なんか変だね」
Fさんは近所に住んでいる両親に子どもを預け、2人でホテルへ向かいました。なんだか嫌な予感がして、先に旦那さんをホテルに入らせて自分はしばらく駐車場で待機することに。

部屋に通されて……

一人で来てほしいと言われたので、旦那さんはまず一人でホテルのラウンジに行き、Cさんと落ち合いました。
「来てくれてありがとう! 部屋を取ってあるからそこで話しましょ」
「はあ……」
Cさんは昨日と打って変わって明るい声。そして2人は客室に向かいました。
「305号室?」
「うん、305号室。シングルだから狭いけどごめんね」
Cさんはすぐ終わる用事だからデイユースで部屋をとったと言いました。

「昨日はありがとう、励ましてくれて」
「いや、それはまあママ友だし……」
「え、それだけ?」
Cさんはふふふ、と笑い出しました。
「あんなに優しくされたの久しぶりだったの」
「はあ……」
「でね、もしかして私のこと好きなんじゃないかな? って。私Fさんより若いし、お酒も飲めるし」
「はあ!? それで僕を呼び出したの?」
「そうよ。でも私は人妻だし、旦那を愛してるし……ねえ、一度だけならいいわよ」

Cさんがそこまで言ったところで、Fさんは部屋の外からドアをバンバン叩きました。実はFさん、念のため旦那さんとスマホの通話を繋げたままにしていたので、2人の会話が全て聞こえていたのです。

「やだ、Fさん連れてきてたの?」
旦那さんがドアを開けると、Fさんの前に服の胸のあたりがはだけたCさんが見えました。
「一度もくそもあるか! てかなに人の旦那呼び出してくれてんの?」
「だって……私のこと好きそうだったから」
Fさんが旦那さんの方を見ると、旦那さんは違う、という風に手を振りました。
「嫁の友達だから話を聞いてただけだよ!」
「え、そうなの!? 騙された!」
「騙してねえよ! Cさんが勝手に勘違いしたんでしょ? 騙されたのはこっちだよ、好意で泊めてあげたのに旦那誘惑されるなんて……もう顔も見たくない!」
Fさんは旦那さんを連れて部屋を出ました。
「あなたも。もう私のママ友に優しくしなくていいから」
「ん、わかった……」
どっと疲れが出たのか、旦那さんは弱々しく頷きました。

その後、FさんがCさんと顔を合わせることはありませんでした。子どもたちもクラスが離れてから疎遠になり、風の噂でCさんがまた他のママ友の家で何かやらかしたという話も耳にしましたが、Fさんは自分がされたことについては黙っていたとのこと。

優しくされると好かれていると勘違いしてしまう人もいますが、家庭が大事なら行動に移すべきではありませんね。

ftnコラムニスト:緑子