今回はそんなSNSにハマったママ友に振り回された私の友人、Jさんのお話です。
すぐ写真を撮るママ友
Jさんはとても料理上手で、手先の器用な女性。子どもに毎日手作りのおやつを食べさせていたり、かわいい服を自分で作ったりしていることから、周りのママ友からは「カリスマ主婦」と呼ばれていました。
「ねえ、このおやつ写真に撮っていい?」
Jさんの家でママ友たちが集まり、幼稚園のバザーに出品する手作り小物の打ち合わせをしている時、ママ友のOさんが言いました。
「これ、子どもたちのおやつの余りだけど……そんなんでいいの?」
その日は子どもたちのために作った手作りアイシングクッキーをママ友にふるまっていました。
「いいのいいの! このアイシングクッキーかわいいし、映えるわー」
Oさんはお皿に盛ったクッキーを色んな角度から写真に撮っています。
「ばえる? 何それ」
「ああ、インスタ映えするってことよ。最近よく聞くでしょ」
夢中で写真を撮るOさんの代わりに、他のママ友が教えてくれました。
「そんなに映えるかなあ……」
「映えるよ! あ、ついでにこの置物とか雑貨も写真に撮っていい? インテリアの参考にしたいの! ね、いいでしょ?」
すごい勢いでOさんに頼まれ、思わずうなずいてしまったJさん。Jさんはアンティークの絵皿を棚に飾るなど、家の中のインテリアにも凝っていたのでOさんの目を惹いたようでした。
「いいけど……なんか恥ずかしい」
「恥ずかしくないでしょ、こんなにオシャレなんだから」
結局Oさんは打ち合わせも放り出して、Jさんの家のあちこちを写真に撮って帰って行きました。
ママ友のインスタ
数日後、ママ友がJさんのスマホに1通のLINEを送ってきました。
「ちょっとJさん、Oさんのインスタ見た?」
JさんはSNSをほぼやっていなかったので、インスタグラムのアカウントも持っていません。なのでOさんのインスタも見ていないことをママ友に伝えました。
「じゃあ、これ見て!」
ママ友がOさんのインスタのスクショらしき写真を何枚も送ってきました。
「なにこれ……」
その写真には、『毎日おやつは手作りしてます』というキャプションと共に、Jさんの作ったアイシングクッキーの写真がアップされていたのです。
その次の写真には、『子どもがいてもオシャレな部屋をキープ!』というキャプションと、Jさんの家のリビングの写真が。その他にも、キッチンやトイレまでJさんの家の写真をアップしていました。
Oさんはまるで自分のもののように、Jさんの作ったクッキーやインテリアの写真をアップしていたのでした。何も知らない人たちが「オシャレですね!」といいね!やコメントをしているようでした。
「そこまでしていいね! を稼ぎたいのかな? ちょっと引いちゃう」
「だよね、もともとJさんのものだって知ってる人は知ってるし」
Jさんとそのママ友はすっかり呆れてしまいました。その日は他のママ友もOさんのインスタについてJさんにLINEしてきたので、Jさんはすっかり疲れてしまいました。
「もうOさんを家に呼ぶのやめようかな……トイレまで写真撮ってるなんて恥ずかしい」
Jさんがママ友のひとりに言うと、そのママ友は「Jさんもインスタ始めれば?」と勧めてきました。
撮られる前に撮る!
Jさんはすぐに、インスタのアカウントを取得。そして少しずつ手作りおやつやキャラ弁、そして家のインテリアの写真を投稿しはじめました。
そしてOさんがママ友の集まりに来る時には、おやつを出す前に自分で写真を撮って投稿するように。
時には「なんか最近ますますパワーアップしてない?」と他のママ友に言われるほど凝ったおやつを出すこともありました。そしてOさんはまた写真をパシャパシャ。そしてさも自分が作ったようにアップ。
結果的にOさんとJさんの両方が同じ日に同じものを撮った写真をアップすることになりました。
しかし投稿する時間はJさんの方が早いことや、他にも凝った料理の写真もアップしているので、何も知らなかったOさんのフォロワーが「これパクリじゃね?」と騒ぎ始めるまでにはさほど時間はかかりませんでした。
とあるフォロワーが「パクリはやめましょう」と忠告したのがきっかけで、JさんのインスタアカウントはOさんの知るところとなりましたが、時すでに遅し。Oさんのフォロワーは実際の知り合い以外、ごっそりJさんのアカウントに移っていました。
「Jさんが私のフォロワーを盗った!」
Oさんがそう騒いでいたようですが、周りのママ友たちに「もともとJさんの作ったものでしょ」とたしなめられたとのことです。
クレクレママやセコケチママも厄介ですが、写真撮らせてクレクレママにも気をつけなければならないと思った出来事でした。
ftnコラムニスト:緑子