嫁いびりをするお姑さんには、自分も姑にいびられていたから今嫁いびりをしているという人も少なくありません。今回は猛烈な嫁いびりに耐えかねていたところを意外な人から終止符を打たれた私の友人、Tさんのお話です。
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猛烈な嫁いびり

Tさんは当時旦那さんの実家で同居中。お舅さんは穏やかでいい人でしたが、お姑さんは「こんなに簡単なこともできないの」とTさんのやることなすこと文句をつけたり、「こんな恥ずかしい娘を育てた親の顔が見たいわ」などとTさんの実家をバカにしたりと、とにかく嫁いびりの激しい人でした。

Tさんは仕事の忙しかった両親のために子どもの頃から家事をこなしていたので掃除も洗濯も完璧ですし、料理は結婚前に料理学校に通って調理師免許を持っているほどの腕前。

それなのに何が気に入らないのか、ちょっとしたミスを見つけてはお姑さんにいびられます。
「息子にはもっといい人がいたはずなのに、こんな嫁なんて」
Tさんの旦那さんがいない時を狙ってそんなことを言い、旦那さんがいる時は甘い顔ばかりするお姑さん。

Tさんが嫁いびりのことを旦那さんに言っても「あの母さんがそんなことするはずないよ」と取り合ってはもらえませんでした。

プチ家出を決行

たまりかねたTさんは、ある日荷物をまとめて一人暮らしの妹の家にプチ家出をすることにしました。
「大変だったね、お姉ちゃん。しばらくここにいなよ」
Tさんの両親はすでに他界していて、実家はもうありません。唯一の血縁者である妹はTさんを優しく受け入れました。
「ごめんね……」
その日は何回も旦那さんやお姑さんから電話があったものの、Tさんは全て無視。実は離婚も考えていました。

「じゃあ仕事行ってくるから、お姉ちゃんはゆっくりしてなよ」
翌朝、そう言って妹が仕事に行くのを見送ったTさん。久しぶりにひとりの時間を持てたことで、ゆっくりと自分のこれからについて考えようと思っていました。

その日の夕方、ふいに妹さんの部屋のインターホンが鳴りました。
「はーい……」
「やあ、迎えにきたよ」
荷物でも来たのかと思い、玄関のドアを開けたTさんはびっくり。
「お、おばあちゃん!? 」
そこに立っていたのは、田舎で暮らしているはずの旦那さんのおばあちゃんでした。旦那さんのおばあちゃんはTさんとの結婚をとても喜んでくれていて、Tさんのことも自分の孫のように可愛がってくれています。
「たまたま息子の家に行ったら、あんたが出てったって聞いたからあのバカに車出させたんだよ」
おばあちゃんが指をさした先には、しょんぼりとした様子の旦那さんの姿が。

「あの嫁、根性悪いだろ?私も折り合いが悪くて一緒に暮らしてないんだ」
おばあちゃんはそう言って笑いました。あの嫁、というのはもちろんお姑さんのことです。
「出てったってことは、相当いびられたね? 」
「……はい」
思わず頷いたTさんの肩を、おばあちゃんは優しくさすってくれました。
「戻っておいで。あたしが守ってあげる。かわいい孫の嫁なんだから」
その言葉に力をもらい、Tさんはとりあえず義実家に戻ることに。

なんと姑は……

Tさんが家に戻ると、お舅さんの姿はあってもお姑さんの姿がありません。
「あれ、お義母さんは? 」
「ああ、もう嫁いびりしないようにあたしが見張るって言ったら出てったよ」
「ええ!? 」
よく聞いてみると、お姑さんとおばあちゃんは犬猿の仲。一緒に暮らしていた頃はよく言い争いになったので、おばあちゃんが呆れてひとりで田舎暮らしをすることにしたそうです。

しかしそろそろ田舎の家を売ろうと思い、その話をしに義実家に訪れたら一緒に暮らしているはずのTさんがおらず、お姑さんを問い詰めたとのこと。
「絶対嫁いびりしてると思って、問い詰めたら逃げやがった」
おばあちゃんは大きくため息をつきました。お姑さんはTさんの旦那さんの妹の家にいるらしく、おばあちゃんがいる間は絶対に戻らないと言い張っているそうでした。

「そんなわけでしばらくお世話になるよ。本当に役に立たない男どもで悪かったね」
おばあちゃんはお舅さんと旦那さんをきつく叱ったらしく、男性陣はしゅんとしていました。

その後おばあちゃんは田舎の家を売って義実家にやってきて、お姑さんは未だ帰ってきていません。

お姑さんはおばあちゃんにいびられたから自分も嫁いびりをしたんだと主張しているとのことです。自分がやられたから他の人にやりかえすという、嫁いびりの負の遺産がTさんの代で途絶えて本当に良かったですね。

ftnコラムニスト:緑子