久しぶりに同窓会に行って同級生に会うと、皆大人になっていて昔のスクールカーストなどは忘れて思い出話をするという人が多いのではないでしょうか。今回は大人になってもスクールカーストを忘れられない同級生に再会してしまった私の知人Aさんのお話です。
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出産してから初めての同窓会

Aさんは小さな子どもを持つ専業主婦。授かり婚で、妊娠するまでは高校の同窓会に何回か参加していましたが、子育てに追われてしばらく参加できませんでした。
「あ、今年も同窓会あるんだ……」
同窓会のお知らせハガキを見てAさんが呟きました。
「いいじゃん、たまには行ってきなよ」
「え、いいの?」
「うん、息抜きしておいで」
しかしその年の同窓会は旦那さんが子どもを見ていてくれるというので、久しぶりに参加することにしました。

「わあ、Aちゃん久しぶり!」
Aさんが同窓会に参加すると、高校の頃に仲の良かったクラスメイトたちが集まってきました。高校時代のAさんはあまり目立つことをするようなタイプではありませんでしたが、優しい人柄だったので人に好かれやすく、友達も沢山いました。

「久しぶりだね! みんな元気?」
「元気だよー、子どもちゃん何歳になった?」
「1歳だよ、子育てしてるとあっという間だね」
「うちはもう3歳! やんちゃよー」
そんな話で友人たちと盛り上がっていると、ひとりの女性がAさんたちのグループに近づいてきました。

「Aさんじゃない! しばらく同窓会来てなかったわね」
その女性はとてもスリムであか抜けた美人で、Aさんはすぐにその女性がクラスのマドンナのFさんであることに気付きました。
「うん、子ども生まれたからしばらく来られなかったんだ」
Aさんがそう答えると、FさんはAさんが結婚していたことも出産していたことも知らなかったようで驚いていました。
「私最近まで東京にいて、帰って来たばっかりだから初めて同窓会に参加したの。Aさん、幸せそうで羨ましいわ」
「幸せっていうかバタバタしてるだけよー。うち、この近くだからまた遊びに来てね」
派手めなタイプだったFさんとはそんなに学生時代に仲が良かったわけではないので、Aさんは社交辞令でそう言いました。

突然の来客

同窓会の一週間後、家族でゆったりと休日を過ごしていたAさんの家にのインターホンがなりました。
「ん? 誰だろう……って、Fさん!」
インターホンのモニターに映っていたのはFさんでした。Aさんは慌てて玄関に走りました。
「Fさん、どうしたの?」
「突然ごめんなさいね、近くまで来たものだから。Aさんがどんなに幸せに暮らしてるか知りたかったから、他の子に住所聞いちゃった。ケーキ買ってきたの、一緒に食べない?」
Fさんは胸元のざっくりと開いた高価そうなワンピースを身に着けていて、まるで女優かモデルのようにキレイでした。
「そうなんだ? まあ、散らかってるけど良ければ……」
Aさんは腑に落ちないながらもFさんを招き入れました。

目を離した隙に

「わあ、こんなキレイなお友達いたんだね!」
Fさんを見るなり旦那さんが言いました。お友達ではなかったような、と思いながらもAさんはFさんに旦那さんを紹介し、キッチンでお茶を淹れました。

「素敵な旦那さんね! Aさんが幸せそうにしてるはずだわ」
「いやいや、そんな……」
美人のFさんに旦那さんは顔を赤くしています。

そしてケーキを食べながらAさんとFさんは高校時代の恩師の話など、昔話に花を咲かせました。
「あ、そろそろオムツ替えなきゃね」
「そっか、僕が替えるよ。せっかく友達来てるんだし」
「大丈夫よ。Fさん、ちょっと隣の部屋行ってくるね」
「ええ、行ってらっしゃい」
Aさんはオムツを替えるために子どもを連れて別の部屋へ移動しました。

「ただいまー。って、何してんの!?」
オムツを替えて部屋に戻ったAさんが目にしたのは、旦那さんに擦り寄って手を握っているFさんの姿でした。
「ああ、あの……目のやり場が……」
ざっくり開いた服から覗く胸の谷間が旦那さんの目の前にあり、旦那さんは顔を真っ赤にして目をそらしています。
「あら、思ったより早かったわね」
Fさんはぱっと旦那さんから手を離して立ち上がりました。
「なに、どういうこと? そんなことしにうちに来たの?」
Aさんが問い詰めると、Fさんはフン、と鼻息荒く答えました。
「2軍女子のくせに幸せそうにしてたから、ムカついたのよ」
「2軍!? いつの話してんの? もう高校生じゃないのよ、私たち」
「うるさいわねえ。別に旦那を寝取ったワケじゃないんだから。お邪魔しました!」

Fさんはそう言い残し、さっさとAさんの家を出て行きました。
「なんだったんだあの人……」
旦那さんはぽかんとしています。
「2軍女子だって(笑) ひどいよね」
Aさんは思い出して笑ってしまいました。たしかにFさんは高校時代から美人でモテモテで、クラスの中心でした。周りにも目立つ女子ばかりだったので、確かに1軍と言えば1軍だったかもしれません。

しかしもうお互い大人ですし、高校生ではありません。未だに高校生のように「2軍」と言い放ったFさんはまるで成長できていないように見えました。

その後Aさんは同級生から、Fさんが東京で不倫をし、それがバレて地元に帰ってきていたこと、そして今猛烈に婚活に励んでいるものの、プライドが高すぎてなかなかうまくいっていないことを聞きました。

Aさんの家にやってきたのは、おそらく自分より目立たなかった女子が自分より幸せそうなのが気に入らなかったからなのでしょう。まずその発想が、高校生の頃から全然成長していませんね。

ftnコラムニスト:緑子