今回は同居のお姑さんに帰省を反対された私の母、Hさんのお話です。
実父が入院
当時Hさんは義実家で同居していました。嫁姑の仲は悪くなかったものの、とにかく気が強くわがままなお姑さんにHさんが合わせる形でなんとかうまくいっていた、という感じ。
しかしある年の年末から実父が体調を崩して入院しており、年明けには正月の挨拶もかねて様子を見に行きたいと思っていました。
そこで3が日が明けた頃、「父の様子を見に行ってもよろしいでしょうか」と義両親と旦那さんにお伺いをたてました。
するとお舅さんと旦那さんは「もちろんいいよ!」と言ってくれたのに対し、お姑さんは「この年明けに何言ってるの!? 明日は私のお客様が来るのよ、おもてなししてくれないと困るわ! 姑をほったらかして実家に帰るなんて、どんな神経してるの?」と大反対。
Hさんは仕方なく帰省を諦め、「また落ち着いたら帰る」とお母さんに連絡をしました。
その日の夜……
反対されなければ帰省するはずだった日の夜中、Hさんの携帯電話に一本の電話がかかってきました。
「お父さんが……」
電話はHさんのお母さんからで、お父さんの容態が急変し、そのまま意識が戻らず亡くなったという知らせでした。
Hさんは慌てて旦那さんを起こし、身支度をして車で30分ほどのところにある、お父さんが入院していた病院に向かいました。
「こんなことなら、反対されても会いに来ればよかった…… 」
Hさんはお父さんの顔を見て呟き、お通夜と葬儀のための準備をしに一旦義実家に戻りました。
姑の反応は……?
帰ってきたHさんを、義両親は心配そうな様子で迎えました。
「あの……」
何か言いかけたお姑さんに向かい、Hさんは言いました。
「亡くなる前に会いたかったです。一生恨みます」
そう言われた瞬間、お姑さんは号泣。やはり申し訳ない気持ちでいたのでしょう。お通夜も葬儀も車椅子で出席しなければならないほど泣き崩れていました。
「人がいつ亡くなるなんてわからないから、今となっては仕方ないと思うけど。その時はやっぱり恨んだよね……」
数年後、お姑さんの葬儀でHさんはそう言っていました。
大切な人が、いつまでも元気でいてくれるとは限りません。会いたいと思った時にできるだけ会いに行った方が良いですし、嫁はそんなに気軽に実家に帰るものではないという風潮も変わって欲しいと思う出来事でした。
ftnコラムニスト:緑子