不倫常習犯の妹
Rさんは旦那さんと2人の子どものいる4人家族。共働きのため仕事と家事、育児が忙しく、仕事の繁忙期は特に細かい家事や家族の食事の栄養バランスにまで手が回らず困っていました。
「お姉ちゃんが繁忙期の間だけ、私が手伝いに行ってあげようか? 」
そう名乗りを上げたのがRさんの実の妹、Aさん。Aさんは派遣の仕事をしていましたが最近契約を切られて現在無職。新しく仕事が決まるまでの間のちょっとしたお小遣い稼ぎに、Rさんの家に家事を手伝いに来るというのです。
「助かるけど、ちょっとな……」
Rさんにはある不安がひとつ。それはAさんが既婚者にばかり手を出してしまう、不倫常習犯であるということ。Aさんはそれが原因で派遣先から契約を切られてばかりいるのです。
「まあうちの旦那は大丈夫か」
そう思い直して、Rさんはしばらくの間Aさんに家に来てもらい、掃除と洗濯、夕飯作りを依頼したのでした。
家事は完璧! しかし……
Aさんはもともと家庭的なところがあるので、Rさんの家をピカピカに保ち、夕飯も栄養バランスが完璧。しかも子どもたちのためにデザートまで用意してくれるので、子どもたちはすぐにAさんに懐きました。
「Aお姉ちゃんのご飯美味しいよ! 」
Rさんは繁忙期のため帰りも遅く、いつもAさんが帰った後に帰宅して子どもたちからそう聞かされていました。確かにRさんのために置いてある夕食は手の込んだ料理で、仕事帰りに自分が作れるような料理ではありません。
「家事は完璧なんだけどね……」
Rさんより先に帰っていた旦那さんにそう言うと、旦那さんはニコニコしながら言いました。
「Aちゃんっていい奥さんになりそうだよね、今日は風呂で背中を流そうかって言われたけど恥ずかしいから断ったよー」
「はあ!? 」
「だって俺背中にシミとかあるし、ジジイだと思われたら嫌だからさー」
「いやいや、天然か! そんなことより…… 」
いくら親戚関係にあるとはいえ、義理の兄の背中を流す義妹はいないでしょう。RさんはまたAさんの悪い癖が出てきたのだと感じました。
たまたま早く帰宅すると
ある日、そろそろ繁忙期も終わりを迎え、Rさんはいつもより早めに帰宅しました。
「ただいまー」
リビングのドアを開けて、Rさんは絶句。なんと胸をはだけたAさんが、ソファに座る旦那さんの膝の上に座ろうとしていたからです。
「ちょっと! 何してんのよ! 」
Rさんは大声をあげ、Aさんはあわてて旦那さんから離れました。子どもたちが食事を終えて子ども部屋に戻ったのをいいことに、Aさんは旦那さんに迫ろうとしていたのでした。
「あー、いいとこに帰ってきてくれた……」
旦那さんはホッとした様子。どうやら旦那さんは急にAさんに迫られ、乱暴に振り払うこともできずに困っていたようでした。
「あーあ、もうちょっとだったのに」
Aさんは悪びれる様子もなく、はだけた衣服を直しながら言いました。
「あんた、人の旦那に何するつもりだったのよ? 」
「んー? 別に。ただ暇だったから、お姉ちゃんの家庭めちゃくちゃにしてやろうかと思っただけ」
Rさんは迷わずAさんに近づき、思い切りビンタを食らわせました。
「あんたの暇つぶしで壊れるような家庭じゃないのよ。もう二度と来ないで! 」
「はいはい、言われなくても来ないわよ」
Aさんは叩かれた頬を押さえながら家を出て行きました。
Rさんは家事をしてもらった分のお金をAさんの口座に振り込み、LINEをブロック。それからもう会っていないそうです。暇だから家庭を壊すなんて、恐ろしい人もいるものですね。きっと今までもそうやって既婚者に手を出し、家庭を壊してきたのでしょう。
ftnコラムニスト:緑子