今回は何かと張り合ってくる従姉妹にとんでもない要求をされたFさんのお話です。
同い年の従姉妹
FさんにはHさんという同い年の従姉妹がいます。母親同士が姉妹で近所に住んでいるせいもあってか、2人は幼いころから何かと比べられて育ってきました。FさんはあまりHさんのことを気にかけていませんでしたが、Hさんの方はFさんをライバルのように感じていたようです。
例えばFさんがお母さんにぬいぐるみを買って貰ったと聞けば、Hさんも同じぬいぐるみか、Fさんのものより少し大きいものを母親にねだって買って貰い、わざわざFさんに見せに来たり。
そんな小さな比べ合いから始まって、Hさんはファッションや髪型などもいつもFさんの真似をしたり、Fさんのものより少し高価なものを身に着けたりするように。
進学先もFさんが決めたところを聞いてから同じ高校に入れるよう受験勉強をするなど、とにかくHさんはFさんに負けないように負けないようにとそればかり考えているような行動をとります。
結婚も同時期で……
自分に張り合ってくるHさんを不思議に思いながらも、Fさんはもともとマイペースな性格なのであまり気にせず自分の好きな仕事に就き、そこで出会った男性と結婚することになりました。
「私結婚するんだ。Hちゃん結婚式来てね」
FさんがHさんにそう告げると、当時Fさんを追いかけて同じ職種に就職したものの、結局合わずに辞めてニートになっていたHさんはお祝いの言葉を口にするどころか、一気に悔しそうな表情に。
そしてFさんが結婚式を挙げてすぐ、Hさんがお見合いで出会った男性との結婚が決まりました。Hさんの結婚式はとても豪華でしたが、参列者は少なかったそうです。
そしてFさんは結婚をしてすぐに妊娠。新しい生活でバタバタしていたFさんはHさんとあまり顔を合わせることもなくなっていて、母親からHさんが不妊治療を始めたと聞きました。
「そんなに焦らなくても、新婚生活を楽しめばいいのに……」
Fさんはそう思いましたが、あまり興味もなかったのでさして何も言いませんでした。幼いころから何かと張り合ってくるHさんにうんざりしていたところもあったのでしょう。
さすがに子どもは授かりものですから、真似しようとしてもそんなに都合よくはいきません。Hさんのご主人に原因があり、子どもができにくいという話を聞いたのはFさんの出産後でした。
突然の訪問
「久しぶりね、Fちゃん! 今日はお願いがあって来たの」
ある日突然、HさんはFさんの新居に訪ねてきました。その日は旦那さんもお休みで、Hさんと話している間は旦那さんが赤ちゃんの面倒を見ると言って別室に連れて行きました。
「お願い? なに? 」
嫌な予感をおぼえながら尋ねると、Hさんはおもむろに上着を脱ぎ捨てました。随分寒い日だったのに、Hさんは肌を露出したミニのワンピースを身に着けています。
「私のスタイル、まだまだイケてるでしょ? Fちゃんは子ども産んで太っちゃったけど」
「……だから何? 」
Hさんはちらりと旦那さんと赤ちゃんがいる部屋の方を見て言いました。
「私の方がイケてるんだから、旦那さんちょうだい! 子種が必要なの。Fちゃんみたいに赤ちゃん産みたいから」
「はあ!? 」
「ずっと同じように育ってきたのに、Fちゃんにだけ赤ちゃんできるのずるいじゃない! 旦那さんちょうだいよ! 」
Fさんは話にならないと感じ、Hさんに上着を着せて家から追い出しました。
その後Fさんがお母さんに相談したところ、Hさんは子どもができないことで旦那さんとの仲が上手くいっておらず、さらにFさんに子どもができて自分にはできないという劣等感に悩まされているということを聞きました。
「同い年で従姉妹だからって、何でも同じじゃなくたっていいのにね」とお母さんは言いました。Hさんは間もなく離婚し、まだ実家でニート生活を送っているそうです。
ftnコラムニスト:緑子