「親ガチャ」という言葉が流行りましたね。子どもは親を選べないという意味です。「親ガチャに外れた」と言われるように、ネガティブな意味で使われることが多いです。今回は、世間からみると「親ガチャに当たった!」と羨むような一族のなかで、人知れず苦しんだ友人A子のエピソードをご紹介します。
ftnews.jp

高学歴一族に生まれたA子

A子の両親は、有名な国立大学出身です。

2歳年上の姉も、名門私立大学を卒業後、外資系の企業に就職しました。

そんな高学歴一族のなかで、A子だけが異彩を放っていました。

常に秀才の姉と比べられる

子どもの頃のA子は、明るく活発で、勉強よりも友だちと遊ぶことが大好きでした。

しかし、教育熱心な両親は、A子姉妹に「英会話・ピアノ・バイオリン・水泳…」と次々に習い事をさせます。

習い事が嫌だったA子。小学生になると「今日はお腹が痛い」と言って、習い事をズル休みすることも増えました。

一方、姉は、勉強も運動も飛び抜けてよくでき、先生たちから「こんなに優秀なお子さんは初めてです!」と褒められるほどの子どもでした。

A子は、そんな姉と比べられるのが、嫌で嫌でたまりません。

学校・塾・習い事どこに行っても「あの優秀な方の妹さんなのね」と言われ、比べられてきたのです。

受験に失敗→一族の「恥」扱い

姉は、一族が通った名門中学に進学します。

しかしA子は、小・中ともに不合格で、高校まで公立で過ごしました。

中学受験に落ちたときは、母親から「恥ずかしくて人前に出せない」と言われたことも……。

この頃から次第に、親戚の集まりにA子だけ連れていかれなくなりました。

子どものころから、両親や姉・親戚からまでも、落ちこぼれのレッテルを貼られ生きてきたのです。

「男の子だから」初めて褒めた言葉が……それ?

A子は、一度だけ両親から褒められたことがありました。

それは男の子を出産したときです。

産院に孫を見にきた父親が「A子!男の子だ!よくやった!!」と大喜びしたのです。

母親から「お父さん、娘二人だったから……。ずっと男の子が欲しかったみたいでね」と言われます。

A子は母親の言葉と喜ぶ父の姿をみて「もし女の子だったら、顔も見に来なかったんじゃないの?」と呆れました。

両親を反面教師に生きるA子

現在A子は、両親が暮らす都心を離れ、関西の田舎で生活をしています。

息子たちを比べたり、勉強を押し付けたりすることもなく、愛情いっぱいの子育てをしています。

久しぶりに会ったA子は「私がもらえなかった愛を子どもたちにあげたいの」と穏やかな笑顔で語ってくれました。

A子の両親は、毒親だったのかもしれません。

しかし彼女は両親や姉を恨むことなく、反面教師にしながら生きています。

筆者もA子から、過去のネガティブな経験を糧にして生きる大切さを学びました。

ftnコラムニスト:広田あや子