1人では入ってはいけないと言われる倉庫
その職場は怪奇現象が多く、物が勝手に動いた、白い影が見えた、といった不思議なことがよく起こっていました。
ただ、実害がないものが多く、何かあっても「またか」という感じ。
みんな軽い怪奇現象には動じていませんでしたが、フロアの隅にある倉庫だけは話が別。
先輩から「絶対に1人で行ってはいけない」と注意されていて、2人以上で入るようにしていました。
注意を無視して、後輩が1人で倉庫に……
その倉庫は、霊感が強い人には不穏な空気が感じられるようで、「見るのも近寄るのも嫌だ」と言っていました。
「倉庫前に黒い影がたたずんでいた」「倉庫に近づいたら廊下の電気が勝手に消えた」など、倉庫前でもヤバいエピソードがあるくらい。
私は「見えない」タイプの人間ですが、それでも何となくジメッとした嫌な雰囲気は感じていました。
ところが霊感ゼロの後輩は「気のせいでしょ」と、注意を聞き流して1人で倉庫に入ってしまったのです。
後輩が倉庫で体験した怖い出来事
倉庫の中は蛍光灯を点灯しても、薄暗い雰囲気。
廊下からの明かりを取り入れるため、重たい段ボールをストッパー代わりに置いて、ドアを開け放していたそうです。
作業をしていると、少しずつ倉庫内が暗くなっていくことに気づいた彼。
段ボールがずれてしまったのか、ドアが閉まりかけていました。
動かないよう重たい段ボールを置いたため、自然にずれることは考えられません。
「社員の誰かが動かしたんだろう、迷惑だな」と思っていたら、突然倉庫の電気がパッと消えて真っ暗に。
さらに、暗闇の中から「ゔうぅ……」という、かすれた男性のうめき声のようなものが聞こえてきたそうです。
霊感ゼロの彼もさすがに怖くなり、慌てて倉庫から脱出しました。
謎が多い不思議な倉庫
その倉庫は昔首を吊った人がいる、戦争時に遺体安置所だった、など諸説あってはっきりしません。
でも、過去に1人で入った人はなぜか病気になったり事故に遭ったりと、良くないことが起きるので、注意するよう伝えられています。
彼はその日の夜に高熱が出たそうですが、その程度ですんでラッキーだったかもしれません。
ちなみに段ボールを動かした人を探したけれど、その時間に倉庫に近づいた人はおらず、該当者は見つかりませんでした。
その事実を知って、後輩はさらに顔色を悪くしていました。
ftnコラムニスト:愉子