冠婚葬祭、特に葬儀では亡くなった方を悼む気持ちを込めて、皆その場にふさわしい服装をするものです。しかし突然その場の空気にそぐわない服装の人が現れれば、視線を集めても仕方ありませんよね。今回は葬儀の場にとんでもない格好で現れた女性にまつわるトラブルに巻き込まれた、Mさんのお話です。
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祖父の葬儀で

Mさんは当時結婚したばかり。長い間入院していた母方の祖父が息を引き取ったと母から連絡があったため、喪服など一式を揃えて葬儀に参列しました。

喪主はMさんのお母さんのお兄さん、つまりMさんにとっては伯父です。Mさんとご両親、Mさんの旦那さんは葬儀の準備などを手伝いながら、親族席に着席しました。

Mさんの伯父さんは大病院の外科部長。そのせいか、一般席には座りきれないほど沢山の弔問客が参列しています。
「さすが伯父さん、顔が広いね……」
「まあ病院ではお偉いさんだもんね」
Mさんはお母さんとそんなことを話しながら、弔問客を見ていました。

突然現れたミニスカ女

間もなくお坊さんのお経が始まり、お焼香の時間に。Mさんは親族席でしたが、喪主は伯父であるため着席したまま次々と通り過ぎる弔問客に会釈をしていました。
「……ん? なんかすごい人来た……」
Mさんの旦那さんが、Mさんの脇腹をつつきます。
「え、誰あのミニスカ!? 」
伯父の病院関係者でしょうか、お焼香に並ぶ弔問客の一番後ろに、ミニ丈の黒ワンピにピンヒール、派手な茶髪をアップにした女性が並んでいたのです。
「ねえお母さん、あの人看護師さんかなあ……」
「どうだろね、すごいミニスカだけど」
故人を亡くした悲しみにくれるはずの親族席が、少しざわつくほどその女性はその場にそぐわない雰囲気を醸し出しています。

段々その女性のお焼香の番が近づいてくるのをMさんが見守っていると、突然しめやかな空気をつんざくような女性の怒鳴り声が響きました。

喪主の愛人と妻がバトル!?

「あんた、何しにきたのよ!!! 」
それは喪主の妻、つまりMさんの伯母の声でした。
「こんなとこまでノコノコやってきやがって! 」
Mさんの伯母は黒紋付の着物の裾が乱れるのも構わず棺の傍から飛び出し、いざお焼香をしようとするミニスカ女性に掴みかかりました。
「ちょっと離してよ! 私だってお悔やみくらい伝えてもいいでしょ! 」
ミニスカ女性は伯母さんの手を振り払おうとしてもがきます。
「あんたの出る幕はないのよこの泥棒猫! 」
お焼香の台の前で、2人の女性が揉み合うのを周りはあっけにとられたように見ていました。喪主の伯父ですら、オロオロとしています。泥棒猫、ということはこのミニスカ女性はどうやら伯父の愛人? そう思ったMさんでしたが、場所が場所。ここは葬儀の場です。2人の揉み合いがさらにヒートアップしていくのをまず止めなければいけませんよね。
「ちょっ……伯母さん! 」
「お義姉さん、落ち着いて! 」
Mさんの旦那さんとお父さんが親族席から飛び出し、2人を引き離して会場の外に連れ出しました。

そこからはとても気まずい雰囲気で、心なしかお坊さんの読むお経の声もトーンが下がったまま葬儀は終わりました。

「一体あの人はなんだったの……」
乱闘で着物も髪も乱れてしまい、結局伯母は最後まで人前に姿を現しませんでした。

後日Mさんに伯母さんから直々に謝罪の連絡があったそうです。やはりあのミニスカ女性は伯父の愛人。同じ病院の看護師だったものの、2人の関係に気付いた伯母が、慰謝料を請求する代わりに相手に病院を辞めてもらったとのことでした。
「まさかまだ関係が続いてたとはね……ショックで我を忘れたわ、あの時はごめんなさい」
「いや、私はいいけど……なんか大変そうでしたね……」

大勢の人が参列してくれた葬儀の日にあんな不祥事があったということから、病院内での伯父さんの立場は非常に悪くなってしまったそうですが、自業自得ですね。

ftnコラムニスト:緑子