今回は同じ美容院に通っているママ友が美容師さんに特別な感情を抱いてしまい、意外な騒動に巻き込まれてしまったSさんのお話です。
美容院が同じママ友
Sさんは小学生のお子さんのいる主婦。Sさんには数ヶ月に1度、ヘアカットとカラーに通っているお気に入りの美容院がありました。
その美容院はスタッフが2名の小さなお店で、Sさんの担当をしてくれている男性と、アシスタントの若い男性のみ。2人とも結構なイケメンで、それもあってSさんは美容院に行くのを毎回ちょっと楽しみにしていました。
「いかがですか? 」
「あ、いい感じです……」
その日Sさんのカットとカラーが終わり、仕上がりを鏡で確認し終わったタイミングで店のドアが開く音。次のお客さんがきたんだな、と思い、Sさんは早くお会計を済ませようと立ち上がりました。
「あ……Yさん! こんにちは」
「あら、Sさんもここに通ってたんだ? 」
次のお客さんは子どもが小学校で同じクラスにいるママ友、Yさん。Yさんはちょっと天然というか思い込んだらまっしぐら! というタイプの女性で、クラスのママ友のなかでもいじられキャラ。Sさんはいつも明るいYさんに好感を持っていました。
「うん、近いし上手だし。じゃあまた、お茶でもしましょ」
その日はそれでお別れし、Sさんは帰路につきました。
ママ友からのLINE
数日後、突然YさんからLINEが来てSさんはびっくり。今までママ友のグループLINEでは連絡を取り合ったことがあるものの、直接連絡がきたのは初めてでした。さらに驚いたのはその内容です。
『Yさんこんにちは! 突然ごめんね、私今日ショッピングモールで〇〇さん(美容師さん)にバッタリ会ったの! お店の外で会うの初めてだからビックリしちゃって……こんな偶然ってある? これって運命かも♡ 』
「う、運命……!? 」
美容師さんの住まいは同じ市内なので、店の外で美容師さんに偶然会うのは何も不思議なことではありません。Sさんは意味がわからず、あたりさわりのない返信をすることしかできませんでした。
『すごい偶然だね! 私はお店以外でバッタリ会ったことはないな。それよりショッピングモールに新しいお店沢山できたみたいだね、どうだった? 』
Yさんからの返信は、またもやSさんには理解できないものでした。
『私ドキドキしちゃって、全然新しいお店なんか行けなかった……。ねえ、本当に運命ってあるんだね! 』
Sさんはそのままそっとしておくことにしました。Yさんも美容師さんも既婚者ですし、大事になることはないだろう、と。
美容師さんからの電話
ある日、Sさんのスマホに1本の電話が。それはいつもの美容院からで、Sさんは次の予約の件かな、と思いながら電話をとりました。
「はい、Sですが」
『あ、Sさんすみません、〇〇です。あの、折り入ってご相談がありまして……』
「相談? 次の予約のことですか? ダブルブッキングしちゃった? 」
『いやそうではなくてですね……Sさん、Yさんと仲いいんですよね? 』
「え? 仲がいいっていうか、普通のママ友ですけど……何かありました? 」
ふとあの『これって運命かも♡ 』というYさんのLINEがSさんの頭に浮かびました。
『実はその、Yさんが毎日のようにシャンプーとブロー、ヘアセットでご来店されてまして……それだけなら良いのですが、毎回仕事が終わったら食事に行こうって誘われるんです。お断りしてもずっと僕の車の前で待っていられたりして……』
「……は? 食事!? 」
『あの僕、お客様と個人的なお付き合いはできませんので……でもYさんよく来て下さるし、なかなかお断りしづらくて、仲の良いSさんからなんとかお伝え頂けないかと……』
「はあ、なるほど」
Sさんは思い込みの激しいYさんの性格から、きっと偶然ショッピングモールで会ったことがきっかけで、美容師さんに好意を抱いてしまったのだと思いました。
「えっと……私からは何とも……」
『ですよね……』
美容師さんは気落ちした声で電話を切りました。
美容師さんが断り続けていればそのうちYさんも諦めるだろうと思い、Sさんからは何も言わないことに決めたそうです。何よりママ友関係で揉め事をおこしたくないですしね。
その後しばらくしてSさんが美容院に行くと、げっそりした様子の美容師さんがいたそうです。話を聞いてみるとYさんはさすがにお金が尽きたのか毎日のようには来なくなったけれど、時々現れては運命運命とばかり言うので困っているとのこと。
美容師さんとは施術中どうしても距離が近くなりますし、外で偶然会ったことでより親近感を抱いてしまうこともあるかもしれません。しかし独りよがりの思い込みで突っ走ってはいけませんよね。
ftnコラムニスト:緑子