今回はそんな可愛い甥っ子へのプレゼントを姑にめちゃくちゃにされてしまったKさんのお話です。
旦那の実家で、甥っ子のお誕生日パーティー
Kさんは結婚15年目の主婦。不妊治療も試みましたが子どもはできず、その代わりに旦那さんの妹の息子を自分の子のようにかわいがっていました。
ある日、旦那さんの実家で甥っ子の7歳のお誕生日パーティーをするというので、旦那さんとKさんも招待されました。
「おばちゃん、チョコのケーキ作って!」
Kさんはお菓子作りが得意なので、甥っ子が遊びに来るたびにいつもケーキやクッキーを作って食べさせていました。中でもスポンジをチョコレートでコーティングしたケーキは甥っ子の大好物。
誕生日パーティーでもそのチョコレートケーキを食べたいという甥っ子のために、Kさんは朝早く起きてケーキを作り、凝ったデコレーションを施し、『おたんじょうびおめでとう』というプレートまで準備していました。
「すごい豪華じゃん! あいつ喜ぶだろうなー」
「喜んでくれたら私も嬉しいよ! さあ、持って行こ!」
ケーキを姑に渡すと・・・
「こんにちは! これ、頼まれてたケーキです」
Kさんはお姑さんにケーキを渡しました。
「あらそう、私もケーキ用意したんだけど……まあいいわ」
お姑さんは子どものできないKさんのことをあまり良く思っていません。Kさんの渡したケーキをちらりと見て、食卓の上に箱をぽんと置きました。
「あ、チョコレートケーキなので冷蔵庫に……」
「はいはい、わかってるわよ」
お姑さんはケーキの箱を持ってどこかに行ってしまいました。
「おばちゃん、チョコレートケーキにしてくれた?」
駆け寄ってきた甥っ子が言いました。
「コラ、そこはありがとうでしょ! Kさんいつもケーキありがとうございます」
旦那さんの妹が言います。
「いいのよー、大好物だもんね? あとでロウソク立ててふーってしようね」
「うん! 楽しみ!」
パーティーの始まり
「ほら、Kさん早く準備手伝って」
「はい! って、あれ……?」
姑に言われて食卓に料理を並べる準備をしていたEさんは、冷蔵庫の中に自分が作ったケーキの箱がないのに気づきました。
「お義母さん、ケーキどこ行きました?」
「ケーキ、あるじゃないそこに」
お姑さんが指さしたのは、冷蔵庫にしまわれている近所のケーキ屋さんの箱。Kさんが持ってきたケーキの箱ではありません。
「あの、私のケーキは……?」
「知らないわよ、そんなの。それより足元が寒くなってきたわね、ファンヒーターの温度上げてくれる?」
「あ、はい……」
Kさんは部屋の端に置かれた石油ファンヒーターのところに行って、思わず息を飲みました。
なんと石油ファンヒーターの前に、Kさんが持ってきたケーキの箱が置かれていたのです。それも紙袋に入れて置かれていたので、皆誰かの荷物だと思って気が付きませんでした。
台無しになったケーキ
「ウソでしょ……」
Kさんはあわててケーキの箱を取り出し、テーブルに置いて箱を開けました。しかし時すでに遅し。チョコレートケーキはファンヒーターの熱風を浴びて溶けてしまい、かわいいデコレーションもプレートも原型をとどめてはいません。
「せっかく作ったのに……」
「何、どうしたの?」
旦那さんの妹が慌ててやってきて、チョコレートケーキの箱を見て絶句。
「ちょっとお母さん! なんでこんなとこ置いたのよ!」
「あらー、ウッカリ忘れちゃってたわ。でもケーキはもうひとつあるし、いいでしょ?」
しらじらしく答えるお姑さん。旦那さんが怒りの声をあげようとした瞬間でした。
「わああああん!!! おばあちゃんひどいや! おばちゃんのケーキこんなボロボロにして!!!」
無残な状態になったケーキを見てしまった甥っ子が大声で泣き出したのです。
おかげで楽しいはずの誕生日パーティーは台無し。怒った旦那さんはKさんを連れて自宅へ帰りました。
その後旦那さんの妹から電話があり、『おばちゃん、またケーキ作ってね』涙声の甥っ子が電話で言うので、Kさんはまた今度作ってあげる約束をしたそうです。
お姑さんといえば、すっかり甥っ子に嫌われて口もきいてもらえなくなったようです。食べ物を粗末にした罰ですね。
ftnコラムニスト:緑子