スナックで働き始めた友人
Aさんは結婚10年目の主婦。子どもが小学校に上がったことから、雑貨店でパートを始めました。そのパート先で同世代のシングルマザーと仲良くなり、プライベートでもよく食事やお茶をするようになったといいます。
「ねえAちゃん、私スナックで働くことにした」
パートの休憩時間。いつものように雑談していると、突然シンママがそう言い出しました。
「え、昼も夜も働くの?大丈夫?」
「うん、週に3回だけだし、子どもももう大きいし」
シンママの子は中学生と高校生。夜に留守番ができる年齢ではありますが、昼は雑貨店、夜はスナックというハードワークでシンママが体調を崩さないか、Aさんは心配していました。
「大丈夫だって!私お酒強いし。よく行ってるバーのマスターにせっかく紹介してもらったからさ」
「そっか…身体に気を付けてね」
「うん、ありがとね!」
スナックの仕事を始めたシンママは、みるみるうちに身なりが派手になり、雑貨店の仕事に遅刻や二日酔いで出勤することが増えました。
「大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!ねえAちゃん今度昼飲みしない?」
「昼飲み?別にいいけど…」
Aさんもお酒が好きなので、たまには2人で昼飲みをしてみるのも良いかとOKしました。
2人だけの昼飲みのはずが…
昼飲みの約束をした当日。昼営業をしている駅前の居酒屋に呼び出されたAさん。
「Aちゃん!こっちこっちー」
先に来ていたシンママが、テーブルから手を振ります。
「…え?どういうこと?」
なんとシンママのテーブルにはシンママ以外に男性が2人座っていました。2人だけだと思っていたAさんはびっくり。
「この人たち、お店によく来てくれてる常連さんなの。Aちゃんと飲むって話したら混ざりたいって」
「混ざりたいって言われても…」
「いいから座って座って!」
Aさんは旦那さん以外の旦那さんと飲むのはちょっと抵抗があったものの、仕方なく席に着きました。
「ねえねえ、どっちの方がカッコイイ?」
お酒が進むにつれて、シンママは男性のうちどちらがいいか聞いてきたり、わざと男性とAさんを接触させようとしたり。
「どっちもカッコイイですよ…」
適当にあしらいながらも、やっぱり知らない男性とお酒を飲むのには抵抗があり、早く帰りたいと思うAさん。
連れていかれたカラオケで
「じゃあ次はカラオケいこ!」
お会計を男性に任せ、シンママはAさんの手を引いて近くのカラオケへ連れて行きます。
「私そろそろ帰るよ…」
「だーめ!カラオケしようよ」
「1時間だけだよ、ほんと」
知らない男性2人とシンママとAさんは4人でカラオケの個室に入りましたが、「あ、電話かかってきちゃった」とシンママとが部屋を出てしまいます。続いてもう一人の男性も「トイレ行ってくる」と出ていき、Aさんは密室で良く知らない男性と2人きりに。
「…なんか歌います?」
残された方の男性にリモコンを渡そうとすると、その手をいきなり握られて固まるAさん。
「Aちゃん、かわいいよね」
「…は?」
「シンママちゃんに暇そうな人妻紹介してって言ったんだけどさ。Aちゃんってあんまり人妻に見えないね」
「ちょっと待って、どういうことですか!?」
Aさんは握られた手をほどき、男性に事情を聞きました。男性が言うには、シンママちゃんと先に出て行った男性はセフレ関係で、残った男性にも誰か女性をあてがうために今日昼飲み会が開催されたとのこと。
その男性はシンママにかなり高額なお酒やご飯を奢ったり、お金を貸したりしているので、そのお礼として差し出されたのがAさんであるというのです。
「ふっざけんな!!!」
Aさんは激怒し、止めようとする男性を振り払い、おそらく自分が飲食したであろう分のお金を置いてカラオケを出ました。
自分がお世話になっているからといって、友達を売るような真似をするなんて、とAさんは怒りを通り越して悲しい気持ちで帰路についたそうです。
その後シンママに「彼とどこまでいった?」と聞かれたけれど一切無視していたら、そのうち勤務態度の悪さでシンママは雑貨店をクビになったとのこと。自業自得ですね。
ftnコラムニスト:緑子