年末年始シーズンのユニバーサルスタジオジャパンは、イルミネーションやプロジェクションマッピング、大きなツリーなどで飾られてとってもロマンチックですよね。そんな素敵な場所であまり見たくないものを見てしまった時のお話です。

バイト仲間とユニバへ

学生時代、私はアルバイト先で仲の良い男女6人グループでユニバに巨大ツリーを見に行く計画を立てました。年末年始のホリデーシーズンは限定のグッズも沢山販売されますし、なにより大きなツリーを生で見てみたかったのです。

「ユニバ楽しみだね!みんなで合わせてお休み取れるかな」
皆で額をつき合わせて相談し、平日の1日だけ6人全員で休み希望を出しました。6人ともそこそこベテランメンバーだったのですが、1日くらいなら他のメンバーでなんとかしてもらおうということに。
「あれ?この日なんかあるの?やたら休み希望多いんだけど…チーフもいないし」
バイト先の女性マネージャーが首をかしげていましたが、ユニバに行くというのはなんだか言いづらくてナイショにしておきました。

いよいよ当日!

そして当日。私たちは朝早くから集まって電車に乗り、ユニバへ向かいました。とにかく開園から閉園まで、1日遊びつくそうと決めて。

「ツリーってあれじゃない?めっちゃでっかい!」
「ほんとだ!早く暗くならないかな」
乗れる限りあらゆる乗り物に乗り、パレードを眺め、ポップコーンを頬張りながら私たちはユニバを楽しんでいました。

そしていよいよ日が落ちて、巨大なツリーに明かりが灯り、イルミネーションが輝きだす時間がやってきたのです。
「ツリーの近くに行こうよ!」
白い息を吐きながらツリーに駆け寄る私たち。その美しさにうっとりとしていたのもつかの間、メンバーのうちの1人があることに気付きました。

ツリーの下にいたのは

「ねえ、あそこにいるのチーフマネージャーじゃない?」
「うそ、マジ?誰といるの?」
向こうに気付かれないよう気をつけながらそっと近寄ると、バイト先の上司である男性チーフマネージャーが女性と手を繋いでツリーを眺めていたのです。
「あれってさ…パートの〇〇さんじゃない?」
よくよく見ると、その女性はパート主婦でも古株の女性でした。チーフマネージャーは独身男性ですが、パートさんは確か結婚していて、子どももいるはず。
「え、不倫じゃん」
「だよね、不倫だわ」
「やば、こっち見てる」
チーフマネージャーがこちらを向いたので慌てて逃げようとしましたが、よく考えたら逃げる必要があるのは向こうのはず。私たちはとりあえずそのまま知らんふりを決め込んでツリーを眺めていました。
「ちょっと…あのさ…」
ついにチーフマネージャーはこちらに来て、私たちに声をかけました。
「なんか…なんていうか…」
いつもバリバリ仕事をこなしているチーフマネージャーが、もごもごと言いにくそうにしていました。それを見かねたのか、パートの女性が駆け寄ってきました。
「見られちゃったらしょうがないよね、ゴメンだけどみんなには黙ってて!ほら、お土産なんでも買ってあげるから!!!」
「え、ほんとに?」
現金なもので、お土産を買って貰えるとなるとみんなお口に×のポーズ。そしてチーフマネージャーから一万円札を何枚か受け取ってその場を離れたのでした。

結局チーフマネージャーに買収された私たちはクリスマス限定のパッケージのお菓子を沢山買い込んで帰宅。翌日バイト先で集まると、チーフマネージャーとパートさんは2人とも休みだったので、「お泊まりだね」とこっそり耳打ちし合いました。

まだ恋愛経験も少なかったあの頃の私たちには、不倫という罪の重さがいまいちよくわからなかったのですが、その後2人の関係がバレ、パートさんは離婚して、チーフマネージャーは遠くに転勤になったそうです。

今でもユニバに行くたびに、あの時手を繋いでいた2人の姿が目に浮かび、なんとなく苦いような切ないような気持ちになります。

ftnコラムニスト:緑子