家計を助けるため、パートへ
Sさんにはまだ2歳になったばかりのお子さんがひとり。子どものためにマイホームを購入したこともあり、家計を助けようと子どもを預けてパートに出ることを決意しました。
そこで問題なのが、パートをしている間はどこに子どもを預けるか。近隣の保育園に申し込んではみたものの、どこも空きがなく、すっかり困り果てていました。
お姑さんから嬉しい提案
困っているSさん夫婦をみかね、自宅から徒歩で10分くらいのところに住んでいるお姑さんが、「私が面倒をみるよ」と申し出てくれたのでした。
条件は、パート代から毎月子どもの食事やおやつ代を渡すこと。それとお姑さんの家はマンションなので、子どものはしゃぐ声などが近所迷惑になるため、Sさんの自宅にお姑さんが通う形にすること。
Sさんはお姑さんに自宅に来られるのはちょっとな…と思いつつ、保育園に預けるよりはお金もかからないことや、パートの時間もそんなに長くはないこと、何より子どもがお姑さんになついていることからその条件を受け入れ、さっそく家に来てもらうことになりました。
家に異変が…
お姑さんに子どもをみてもらうようになってから1ヶ月。Sさんは少しずつ異変を感じるようになっていたそうです。
買ったばかりの洗濯洗剤が減っていたり、米びつにいっぱい入れておいたはずのお米の減りが異様に早かったり…。さらに、食用油やチンするだけのご飯、カップラーメンなどの在庫も半分になっています。
多少であれば、「お義母さんが使っているのかな」と子どもを見てもらっている負い目もあって何も聞かずにいたのですが、徐々に「それにしても減りすぎだろ」という量になってきたといいます。
念のため…
一体自分がいない間、姑はどのように過ごしているのだろう?と思ったSさんは、リビングの棚の上に赤ちゃんやペットの様子が見られるベビーモニターを設置してみることに。
その棚の上からはリビング全体が見渡せるうえに、写真立てやガラスの置物などが置いてあるのでお姑さんにも気づかれにくい絶好のスポット。
「じゃあお義母さん、今日もよろしくお願いします」
「はいはい、行ってらっしゃい」
Sさんはモニターのスイッチを入れ、自宅にやってきたお姑さんと入れ替わりに家を出ました。しかし実は、その日はパートがお休みの日。
Sさんは自宅の車庫に停めてある車の後部座席に身体を隠すようにして待機。モニターからスマホに送られてくる映像をチェックしていました。
モニターに映し出されたのは
モニターに映し出されていたのは、仲良く遊ぶお姑さんの子どもの姿。Sさんは安心しつつも、思わず目を疑う光景が。
「ん…?」
ふいにお姑さんがリビングのテレビの前に子どもを座らせ、立ち上がったのが見えました。そしてどこかへ行ったかと思うと、台所から何かペットボトルのようなものを何本も抱えて持ってきます。
「あ、買い置きのお茶…」
Sさんと旦那さんが飲むために買っておいてあるペットボトルのお茶を、お姑さんが持参してきた大きなバッグに詰め込む姿が映っています。まあお茶くらいいいか、とSさんはそのまま見続けました。
「ヤバい、気づかれた?」
お茶をバッグに詰めたあと、お姑さんはまた立ち上がります。そしておもむろに立ち上がり、ベビーモニターの設置してある棚に近づいてきました。
「どうしよう…」
こんなものを設置して、監視しているのかと気分を悪くされるかもしれない、そう思って焦るSさんの気も知らず、お姑さんはいきなり棚の引き出しを開けて中をごそごそと漁りだしたのです。
モニターには下を向いているお姑さんの頭しか映らなくなり、Sさんは「あの棚には確か…」と中に
入れていたものを思い出してはっとしました。
もう我慢できない!
「さすがにそれはダメでしょ…」
モニターには、引き出しの中から現金の入った封筒を取り出し、中から何枚か抜き取るお姑さんの姿が。
そう、その引き出しには生活費にするために銀行でおろしたばかりの現金が数万円入っていたのです。お姑さんは現金をポケットに押し込み、子どもの隣りにでごろりと横になります。そして片手でリモコンを掴み、子どもがテレビを見ているのにもかかわらずチャンネルを変えている様子。
子どもがびっくりして泣き出しても、お姑さんは平気な顔でテレビを見ています。
「全然面倒みてくれてないじゃん!もう我慢できない…」
Sさんは車から飛び出し、慌てて家の中に入りました。
「ただいまー」
「え、Sちゃんどうしたの?パートは?」
お姑さんは慌てて体を起こしました。
「今日は暇だから早く上がってって言われちゃって。お義母さんいつもありがとうございます、今日はちょっとお礼をしなきゃと思って」
Sさんはベビーモニターの置いてある棚に向かい、引き出しを開けて封筒を取り出しました。
「あれ?おかしいな、ちょっと減ってる…」
チラッとお姑さんの方を見ると、お姑さんは額に汗を浮かべながらも知らん顔をしています。
「〇〇さん(旦那さん)が使ったのかな…とりあえずお義母さん、少ないですがこれ、お礼です」
Sさんは封筒から1万円を取り出してお姑さんに渡そうとしました。
「いや、そんなお金が欲しくて来てるんじゃないんだよ、ただ孫と遊びたくて…」
さっきお金盗ったくせに、と思いながらもSさんはお姑さんにお金を握らせ、その日は帰ってもらうことに。
その後、Sさんは旦那さんにモニターの録画を見せました。そこに映し出される母親の様子に旦那さんはショックを受け、「もう母さんに来てもらうのはやめよう」と苦々しく呟きました。
幸いなことに近くの保育園に空きが出たと連絡があったこともあり、お姑さんに来てもらって子どもの面倒を見てもらうことはなくなったそうです。また旦那さんはお姑さんを家に入れるのを嫌がり、会う時はいつも旦那さんの実家に出向くことにしているそうです。
自分の信頼している人が泥棒をしているところを目の当たりにするのはショックですが、お義母さんももう人のものを盗むことができなくなりますし、お互いにとっても良かったのではないでしょうか。
ftnコラムニスト:緑子