古着やヴィンテージが賢いおしゃれのキーアイテムになってきました。近ごろは百貨店やセレクトショップでも取り扱いが広がり、スタイリングの有力な選択肢に。でも、着慣れない大人世代にとっては着こなしに悩むところも。そんな古着ビギナー向けに『古着ひとつでおしゃれになります』(Gakken刊)を出版しました。今回はこの本を入口に、古着の魅力や買い方、コーディネート術などをお伝えします。手持ち服がぐっと新鮮に見えるヒントがいっぱいです。

古着は“1点だけ”でOK 手持ち服とのレイヤードが一番の近道

イラスト:EccO

出典:『古着ひとつでおしゃれになります』(Gakken刊)

古着の着こなしでおすすめしたいのは、「1点だけ」の取り入れです。手持ち服でのコーディネートに、古着を1点混ぜる着方。全体にほのかなレトロ風味が備わって、こなれ感が高まります。

手持ちアイテムに古着の風合いを重ねると、表情が深くなります。もともと古着はまっさらではない、少し着古したムードが持ち味。新しく買った服や手持ちの服はレイヤードに好都合。古着感を適度にやわらげてくれます。

たとえば古着のジーンズ(デニムパンツ)に、夏物のレーススカートを重ねてみましょう。互いの質感を引き立て合って、味わい深い雰囲気に仕上がります。今は季節にとらわれない「シーズンレス」がトレンドなので、こうした素材ミックスでコントラストをつくると、おしゃれの幅が広がります。ボトムスにムードが出るから、トップスは癖のないニットで合わせるだけでOK。それぞれの素材が心地よいハーモニーを奏でて、こなれた雰囲気にまとまります。

“お得感”を狙うならアウターやニット 素材や仕立てで差が付く

古着ミックスコーデ

出典:『古着ひとつでおしゃれになります』(Gakken刊)

どうせ買うのであれば、お得感の高い古着を手に入れたいものです。特別なレア物を別にして、割とお買い得なのは、アウター類です。昔の上質ウールやレザーなど、今では高額になっている素材も新品に比べてお得感があります。手仕事技や風合いが魅力的なニットウエアもおすすめです。

服飾の製造技術はめざましく進歩しているのですが、古い服がすべて不出来なわけではありません。むしろ仕立て技術や素材は昔のほうが優れているケースが珍しくありません。大量生産では再現しにくい表情こそ、オールドアウターの大きな価値です。ニットは手編みのクラフト感が大きな魅力になります。

たとえばヴィンテージのゼブラ柄ファーのアウター。曲線的な打ち合わせやレザーのトリミングが効いていて、冬の装いに深みが出ます。ここにシアーなプリーツスカートを合わせれば、「厚×薄」の素材差が際立つ、メリハリの利いた着映えに。テーラードのブームが続く中、上質なツイード素材を丁寧に仕立てた古いジャケットは掘り出し物。トラッドやアイビーのトレンドにもマッチ。コストパフォーマンスの高さを実感できるアイテムです。

メンズ古着は宝の山 ゆるっと着て抜け感アップ

メンズ古着でほどよい“ヌケ感”をプラス

出典:『古着ひとつでおしゃれになります』(Gakken刊)

着こなしの面でおすすめしたいのは、メンズのウエアです。メンズ服を混ぜて着る「ジェンダーミックス」の装いはこなれ感が格別。フェミニンさを抑えやすい点でも支持が広がってきました。メンズ物が豊富な古着マーケットでは、お値打ちの品を手に入れやすくなっています。

トレンチコート、ライダース(バイカー)ジャケット、CPOジャケット、Gジャン(デニムジャケット)――。近ごろのトレンドアイテムにはメンズ由来のウエアがいっぱいです。オーバーサイズでゆるっと着れば、抜け感が備わります。適度なユーズド風味が漂うのも、古着ならではのよさです。

筆者の愛用品には、メンズ由来の古着が少なくありません。新品の売り場では好みの「ワンサイズ上」を見付けにくいことがありますが、古着店なら大きめのサイズが選び放題。男性の骨格に合わせたボクシーなシルエットは肩を落として着るのに好都合です。ミリタリー系やフィッシャーマンズセーター、レザーアウターにも掘り出し物が眠っています。

「メンズは難しそう」と思われがちですが、実はコーディネートはとても簡単。フェミニンなスカートやワンピースに合わせてテイストミックスを楽しむのもよし、紳士風のハンサムなパンツで潔くまとめるのも素敵です。ほどよい抜け感が備わって、いつもの装いに新鮮さが加わります。

着こなしのバリエーションが多彩に 手持ち服が輝きを増す

イラスト:EccO

出典:『古着ひとつでおしゃれになります』(Gakken刊)

手持ちワードローブから別の雰囲気を引き出せるのは、古着を取り入れる最大級のメリットです。もともとのテイストがやわらいで、全体がこなれた着映えに整います。つまり、着回しレパートリーが一気に広がるわけです。主張が強めのウエアでも、角が取れて、穏やかな見え具合に。着こなしのコツは、異なるムードのアイテム同士をちょっと無理めに引き合わせることです。

新品アイテムで固めると、妙に気張った感じが出て、ぎこちなく映ることがあります。でも、古着を取り入れると、ほどよく着古した感が加わって、気負いや頑張り感を遠ざけやすくなります。自分好みのテイストを盛り込むうえでも、選択肢の多い古着は重宝です。

こちらのイラストは手持ちのワンピースにオーバーサイズの古着デニムジャケットを重ねたイメージです。このようにテイストが真逆のウエア同士をミックスすると、互いを引き立て合う関係に。秋冬であれば、レザーやボア、中綿、ダウンなどのアウターが使えます。メンズのアウターは古着店ではたくさん流通しているので、入手しやすいのも好都合です。

東京・高円寺のヴィンテージショップ「Frescade」

出典:『古着ひとつでおしゃれになります』(Gakken刊)

過去の自分からの贈り物「セルフヴィンテージ」 眠れるお宝を復活

実は、あなたのクローゼットにも宝物が眠っているかもしれません。昔買って大切にしていた服や、ずっととっておいた思い出の品。それらは立派な「セルフヴィンテージ」です。昔のスカートを今風のニットと合わせたり、古いレザージャケットに軽い素材を重ねたり。今の目線でコーディネートし直すだけで、一気に旬の空気が漂います。

我が家遺産の「ファミリーヴィンテージ」 家族から受け継いだ逸品

家族から譲り受けた服も、古着コーデの心強い味方になります。お父さんのセーター、お母さんのスカート、おばあちゃんのブローチやスカーフ。我が家に伝わる「ファミリーヴィンテージ」は、ストーリーの身近さも魅力です。現代の服と合わせれば、懐かしさと新しさが共存する唯一のスタイリングに。家族の記憶を引き継げるのは、特別な体験です。

達人アドバイスからショップ紹介まで 古着ワールドを深掘り

イラスト:EccO

出典:『古着ひとつでおしゃれになります』(Gakken刊) 

本の中では古着を使って、自分好みにアレンジするコツやテクニックをたくさん解説しました。東京・高円寺の有名ヴィンテージショップ「Frescade(フレスケード)」をはじめ、おすすめの古着・ヴィンテージショップを解説付きでリポート。モデルの柴田紗希さんをはじめ、お手本にしたくなる着こなし達人たちのアドバイスもスタイリングの参考になるはずです。

日本の古着は状態のよさが有名で、古着ショップは訪日観光客にも人気です。価格面でも国際的に割安。今ではムードや風合いが再評価されて、大人おしゃれの選択肢に加わりました。トップブランドがこぞって「古着風」の新作を打ち出しているのも、その証拠です。手持ちワードローブから別の魅力を引き出してくれるのに加え、サステナブルでギルトフリーな点も見逃せません。大人の古着使いはいいことずくめだから、この本を通して、古着との付き合いを深めていってもらえたらうれしく思います。

ファッションジャーナリスト 宮田理江