ジェンダーレスやユニセックスの先を行く「ジェンダーフリュイド」に注目
ジェンダーレスは上半身がメンズでボトムスがウィメンズといったミックスコーディネートが主体でした。さらに進んだジェンダーフリュイドは最初からどちらの性別にも寄せないウエアを使って、中立的なイメージに整える着方です。シンプルでミニマルな雰囲気のユニセックスに比べて、メンズとウィメンズの「いいとこ取り」をしたような、しなやかでこなれたスタイリングです。
ダブルブレストのスーツでゆったり端正に
パンツのスーツやセットアップは性別に関係なく着やすいウエアです。ダブルブレストのジャケットはさらにジェンダーをぼかす効果を発揮。端正な紳士服譲りのイメージが薫ります。ゆったりめのサイズを選ぶのがボディーの輪郭を拾わない着映えに仕上るコツです。
ワークウエア仕様のアイテムもジェンダーレスの着方に好都合です。メンズライクなスーツやセットアップの立体感ともなじみます。お勧めのシルエットはやや幅広のセミワイドパンツ。正面に折り目(クリーズライン)の入ったパンツはマニッシュな雰囲気が強まります。
トレンチブルゾンとスカートで「フェミリタリー」
上下でマスキュリンとフェミニンを掛け合わせるスタイリングはジェンダーミックスの基本技です。アウターを着る機会の増える秋冬シーズンは、トレンチコートに代表されるミリタリー色を帯びたアウターに、ロングスカートのようなたおやかボトムスで合わせるコーディネートが効果的です。
デザインと丈が変化する2wayタイプのトレンチブルゾンは、天気や気分に応じて着方を変えられます。上下をひっくり返すと、トレンチコートからフライトジャケットに様変わり。ボトムスもラップ風のプリーツスカートパンツで、性別を問わずにまとえます。2wayブルゾンとの組み合わせ次第でマルチな着こなしを試せます。
上下回転の2way仕様で着回し自在に
体のラインを拾いにくいブルゾンはジェンダーフリュイドな装いに向くアウターです。オーバーサイズめに着れば、さらに性別イメージがあいまいに映ります。
こちらの2人が着ているブルゾンは実は、上下をひっくり返せる2wayタイプ。さらに270度回転することで、別のルックが生まれます。ワークウエアのタフなコットンの質感が印象的です。パンツも上下で変化する2way。両脇のファスナーを開けて、シルエットを変えられます。ペインターパンツとサルエルパンツのいいところを重ねたようなフォルムは着る人を選びません。
ゆったりPコートはチャーミングにアレンジ
ボリューミーなゆったりシルエットのPコートは海軍に起源を持つミリタリー系のアウターです。メルトン系の厚手生地で織られたPコートなら、防寒性もしっかり。スカートとも意外な好相性を発揮してくれます。
前を閉じないで着るレイヤード使いはコートを重たく見せません。大襟を深く折り返して、のどかな着映えに。ミニ丈ボトムスに重ねれば、コート1枚で着ているかのよう。足元にはハイソックスを迎えて、ガーリー感をプラス。一方、パンツで合わせると、オーバーサイズ風のチャーミングな着映えに整います。
ダッフルコートは「長短」と「2トーン」で
Pコートと同じく、秋冬のアイコン的なアウターにダッフルコートがあります。かさばる印象のあるダッフルですが、ストレートシルエットは着ぶくれの心配レス。パートナーと色違いで合わせるリンクスタイリングにも好都合です。
ストレートシルエットのダッフルコートは前を開けて着ても、スレンダーな見え具合に仕上がります。白シャツでさわやかなきちんと感を印象付けて。ボトムスはミニ丈を選ぶと、コートとの着丈違いが際立つ「長短ずらし」のコーデを演出できます。一方、白ダッフルはグレーとの1トーンで都会的にまとめています。
キルトパンツ×技ありニットでマルチ着こなし
英国の伝統的なキルトは性別を選ばない装いに取り入れやすいウエアです。近ごろは街中でまとった男性を見る機会が増えてきました。スカートと融け合わせたタイプはさらに着こなしバリエーションが広がります。
ラップ風のキルトスカートパンツは生地を片足ずつ巻き付けるユニークなデザインです。正面から見ると、プリーツスカートのよう。スラックスの着心地も備えていて、楽に過ごせます。ニットのハイネック・プルオーバーは着回しが多彩な4way。色違いの2枚を重ねてあり、前後で色がスイッチする驚きと楽しさを演出する、実用性抜群のアイテムです。
ジェンダーフリュイドを取り入れてもっと自分らしく
「ビューティフルピープル」は熊切秀典デザイナーが2006年に立ち上げたブランドです。パターン作りやテーラリングの技術が高いことで有名。ミリタリーやロックに解釈を加えたテイストが持ち味です。定評のあるアイコン的アイテムはライダースジャケットやトレンチコート。「大人のための子供服」をコンセプトに展開し、そのユニークな発想が多くの支持を集めています。
洋服の表と裏に続く別の空間を意識した「Side-C(サイドシー)」コレクションは服の発明とも呼べそうな提案です。軸を見つけて上下をひっくり返すことで新しい機能やフォルムを生み出すアプローチ「DOUBLE-END(ダブルエンド)」も独創的な試み。ジェンダーフリュイドなリンクコーデを提案しているのは、様々な垣根を超えてきた「ビューティフルピープル」ならではです。
性別を意識すると、着こなしの選択肢が狭くなりがちです。ニュートラルなイメージを軸に据えたジェンダーフリュイドを取り入れて、自由で自分らしいスタイルを楽しんでみてくださいね。
ファッションジャーナリスト 宮田理江