【ウィム ガゼット】らしさに溢れた15周年記念アイテム
15周年を記念し、2024年秋冬シーズンは3つのテーマにわけて周年アイテムを提案している【ウィム ガゼット】。周年アイテムの企画にあたってスタッフ全員にアンケートを取り、その声をできる限り拾ったため「周年アイテムはスタッフ全員で作ったようなものです」と若林さんは話します。
「すごく人気があったものや、今後15年、20年と長く愛用してもらえるようなものを作っていきたい思いがスタッフ全員共通してありました」と言うとおり、1回目のテーマは顧客から愛されているデニム。
2回目の今回は【ウィム ガゼット】らしいアイテムとして、ムートンベストやライダースジャケット、テーラードジャケットなどをラインナップしています。若林さんにとっても一番思い入れのある素材はレザーだそう。
「革ものが強いブランドという自負があります。特にムートンはアイコン的位置づけで、周年のムートンベストもかなりこだわりました。ベストとしてはもちろん、コートのライナーとして着ていただいてもいいし、襟を垂らしても着られるという独特なシルエットです。このニュアンスカラーを出すため、何度も何度も修正を繰り返しました」
ライダースジャケットもブランドデビュー当時からの定番。
「ライダースはオーバーサイズやタイトシルエットなど、色々なデザインで提案してきました。レザーも毎回変えていて、今回は柔らかなシープスキンを採用しています。少し着古した感じの加工をして、今年っぽくやや大きめのサイズに。ハードな印象になりすぎないよう、ブラウンにしています」
ダブルのジャケットは、アウター感覚で使える中肉の生地を使用。
「素材が柔らかいので、あえてかっちりとしたシルエットにしたくて、メンズのアイテムが上手な工場で作ってもらいました。きれいな形で誰が着ても上品に見えます」
少し甘さを取り入れることが若林さんの色
若林さんはディレクターアシスタントを経て2016年からディレクターに就任します。
「先代は口で説明されない方だったので、彼女の頭の中にあるのを汲み取って、察知するしかない。アシスタント時代はかなり鍛えられました(笑)」
根幹は変えずに、その時々のトレンドを入れるスタイルは15年前から一貫して変わらない【ウィム ガゼット】のコンセプト。頼りになる先代ディレクターが辞めたことが、若林さんが【ウィム ガゼット】に関わってからの最大のピンチだったそう。
「先代の存在があまりにも大きかったこともあり、今までのテイストを壊しちゃいけない、お客様がいなくなってしまったら、ブランドがなくなるんじゃないか、という不安が押し寄せてきました。でも周りの人たちが支えてくれて、力が抜けました。
先代はトレンドを発信するタイプ、私はバランスよくトレンドを取り入れるタイプと得意とする部分が少し異なるため、すべて先代と同じにしなくていいんですよね。私の色をつけた結果、デザイン性が強く、少し甘めのアイテムが増えています」
ショップスタッフまでブランドのポリシーを徹底的に共有
若林さんがディレクターに就任し、まず力を入れたのがディスカッションによるスタッフ間のコンセプト共有。
「私もプレスもバイヤーも異動や転職組だったので、何を大切にしているブランドなのかという基礎の部分をスタッフ全員で共有しました。本社スタッフはずっとお店にいられないので、ブランドのポリシーをショップスタッフにも理解してもらい、また現場の意見をちゃんとフィードバックしてもらえる環境作りもしました」
スタッフ同士がしっかり連携できているのも【ウィム ガゼット】の強み。
「スタッフ一人ひとりが【ウィム ガゼット】が好きなのは大前提として、販売の人達の意識がすごく高いんです。純粋培養の人ばかりで、中にはブランドの生き字引とも言える15年選手もいます。彼女たちが新しいスタッフの教育をしっかりしてくれているから、お客様も安心してお買い物ができるように思います」
2024年10月現在【ウィム ガゼット】は東京から福岡まで11店舗あります。この規模になってもスタッフ全員が同じ熱量を持てているのは稀有な例に思えます。
「バイヤーにディレクターとしての希望は伝えますが、尊重するのはバイヤーの考え。最終的なジャッジは委ねます。もちろん他のスタッフに対してもそうで、それぞれが自分の意思を通せる環境にあります。
トップダウンで命令されると、言われた側のやる気を削ぐことにもなりますよね。みんながお互いを信頼しあって、自立して個々の仕事に集中できるから社歴の長いスタッフが多いのかなと分析しています」
長く在籍してくれるスタッフが多いということは、働きやすい環境が整えられているからでしょう。
「それぞれに裁量権があるので、長く働いてもらえるのかもしれないです。責任を負ってもらう部分はもちろんありますが、楽しんで仕事をしてほしい気持ちが強いです。社内でしっかりコミュニケーションができているので、それが接客にも表れていると思うんですよね」
ブランドとしてお客様を裏切れない
お話を聞いていくと、顧客とブランドの間で信頼関係が築かれているのがわかります。
「10年前に買ったジャケットを今も大事にしてくださっているお客様もいますし、新しくお客様になってくださった方もいます。いずれにしても背景にあるテーマやストーリー、ブランドの理念を汲み取って、共感してくださる熱心なお客様が多いように思います。だから【ウィム ガゼット】が得意とするものを喜んでくださるお客様が多い印象ですし、ブランドとしてお客様を裏切れない責任感はあります。
ディレクターが代替わりして6年ほどですが、その時からバイヤーもプレスもデザイナーも変わっていません。ツーカーでできるのはいいけど、アイデアが固定化されそうな懸念もあって。若手も積極的に採用して新しい感覚を入れています。私もそのように育てていただいたので、そんなふうにお返ししたいと思っています」
※価格はすべて税込みです
Photograph:川本史織
Senior Writer:津島千佳