著名人にもファンの多いおしゃれアクセサリーブランドが「petite robe noire(プティローブノアー)」。伝統的な手仕事製法を大切にしながら、シルバーと天然石を使って阿部好世デザイナーが1つ1つ工房で手作りしています。阿部さんの重ね付け術はすぐに取り入れやすいから、フォロワーがいっぱい。今回はサマールックにも役立てやすいネックレスの重ね付け技を、阿部さんに教わりました。
重ね付けのコツは、少し見た目の異なるアイテムを混ぜるところにあります。たとえば、3本のネックレスを使う場合。こちらの重ね付けでは大胆な大ぶりシルバーと、6ミリパールネックレスに加え、トルマリン×ターコイズの3本を選びました。トルマリン × ターコイズのワントップタイプは長さやストーン使いがほかの2本とは違っていて、変化が生まれています。
一方、パールのネックレスは首周りにボリュームを持たせつつ、柔らかい雰囲気も醸し出しました。それぞれに質感が異なるので、ネックゾーンに味わい深いムードが備わっています。このように3本それぞれに別の表情を帯びたタイプを組み合わせるのが趣のある重ね付けのポイントです。
ワントップ3つでストーリーを帯びた胸元に
先ほどはワントップを1本だけ組み入れたアレンジでした。今度はワントップの3本使いを見てみましょう。ワントップ部分の見え具合が似通った感じになるので、チェーンの長さでバリエーションを出すのが賢い重ね方です。
長さの違うワントップのネックレス3本を重ね付けしました。それぞれ少しずつ長さをずらしてあるから、全体で縦落ち感が強まっています。ワントップ部分もかぶらないので、それぞれがきれいに映る仕掛けです。長さを変えるだけの簡単アレンジ。目立ちすぎないワントップを選べば、お仕事シーンにも活用できそうです。
最も短い芍薬(しゃくやく)のネックレスはふっくらしたボタン形のバロックパールがノーブルなたたずまい。2番目のネックレスに用いたのは、天然のトルマリン。差し色効果も発揮しています。最もロングのネックレスには花びらのモチーフをあしらい、やさしげなムードを寄り添わせました。このようにイメージの違うワントップを組み合わせることによって、胸元でストーリーを演出できます。
グラマラスでシックな表情 ストーンならではのつやめき
立体感や華やかな印象を強めるには、ストーン系ネックレスの重ね付けが効果的です。ストーンワントップならではのきらめきや色合いが胸元にリッチ感をプラス。大ぶりのストーンを連ねたタイプを組み入れると、さらに立体感が増します。ギラギラしないのも天然石のよさです。
大ぶりの黒曜石をつなげたネックレスに、ワントップの色石(全てトルマリン)タイプ3本を合わせました。石の色をダークカラーに寄せてあるので、全体に落ち着いた雰囲気に。印象的なデコルテ周りをつくることができます。このようにストーンを主役にする場合、シンプルな服が背景のような効果を発揮。夏のシンプルでシックな装いにつやめきやグラマラス感を演出できるから、積極的に使いたいテクニックです。
シルバーとパールのマリアージュで気品と個性を両立
気品と個性を重んじる装いに整えるなら、シルバーとパールのコンビネーションがおすすめです。どちらもきらめきすぎず、品格を保ちやすいから、絶好のパートナー。素材感の違いが装いに深みをもたらしてくれそうです。上品パールと品格シルバーの組み合わせがおしゃれ心をときめかせます。
最も内側に巻いたのは、小さな4ミリサイズのパールをつなげたネックレスです。その外側に曲線がかわいらしいシルバーネックレス、さらにガーネット×パールのワントップを寄り添わせています。オパールネックレスは胸元深くまで垂らして、きれいな鋭角イメージを引き出しました。素材感やシルエットの異なる4本の協奏曲が重ね付けの魅力を証明しています。
デコラティブ系を重ねて、アートフルでリッチな華やぎ
重ね付けの場合、それぞれのネックレスはシンプルめを選ぶことが多くなりますが、ドレスアップの機会にはアート感を帯びたデコラティブなタイプも候補に加えてみましょう。シンプルな服でも一気に格上げが叶います。立体感が出ると、顔が小さく映る効果も引き出せそうです。
2本使いでもしっかりグラマラスに映るのは、両方とも主張が強めのネックレスだから。ボリューミーなシルバーネックレスとイチゴモチーフのワントップという、雰囲気をずらしたコンビネーション。互いを引き立て合うコントラストです。
シャラシャラ・つぶつぶしたシルバーのモチーフは「幸せの実」をイメージしているそう。立体感が強まって、首が華奢に見える効果も。ガーネットとトルマリンを組み合わせたタイプはフルーツのようにチャーミングな雰囲気。黒のトップスに映えるアートフルネックレスは1本持っていると重宝しそうです。
プロが惚れ込む独自のテイスト 工房&ストアで魅力を実感
「プティローブノアー」は手仕事技の丁寧なクリエーションにファンが多いブランドです。阿部デザイナーはヴィンテージテイストを取り入れたミックスがお得意で、その独創的なコスチュームジュエリーはファッション業界でも人気です。
ショップ兼工房(予約制)が2024年3月に東京・蔵前にオープンしました。「日本のブルックリン」とも呼ばれる蔵前は職人技の工場・工房が多い注目エリア。手仕事ならではの繊細でヒューマンなジュエリーは装いに穏やかでやさしげなムードを寄り添わせてくれます。
ネックレスが1本だけだと、その1本のイメージが強く出やすくなりがち。でも、重ね付けを選べば、自分好みのトーンに整えやすくなります。トレンドに流されないから、狙い通りのイメージづくりに役立ちそう。シーズンごとに1本ずつ増やしていけば、さらに組み合わせレパートリーを増やせます。今回の重ね付けテクニックを参考にして、薄着になるサマーシーズンこそ、ネックレスを上手に使いこなしてみては。
ファッションジャーナリスト 宮田理江