【アウトドアプロダクツ】のマスターピースに付加価値をつけたい
品のいいメンズライクなファッションが好きな女性に向けて誕生した【アウトドアプロダクツユージュアルシングス】。そのクリエイティブディレクターとして白羽の矢が立ったのが、プレッピーやアイビーを元にしたマニッシュなウィメンズウェアに定評がある染谷真太郎さんでした。
「僕のクリエイティブに共感してくださったベイクルーズの方がお声がけしてくれたので、安心してディレクションができると思った」と話す染谷さんは【アウトドアプロダクツ】に対してこんなイメージがあるそう。
「歴史もあって、今のデイパックの形を生み出したブランドでありながら、適正な評価を受けていない印象があります。他のアウトドアブランドでは名品と呼ばれるアイコニックなバッグがあるのに、デイパックの『452』はそこまでの評価がされていませんよね。名作としての地位が日本では確立されていないのが不思議です」
ブランド名にも掲げられた「ユージュアルシングス=いつものもの」の通り、【アウトドアプロダクツユージュアルシングス】では定番の「452」や「4052EXPT」、ロールボストンの「231」シリーズをピックアップ。
少しレトロな書体で刺しゅうすることで「452」や「231」の、新たな一面を引き出しています。
「【アウトドアプロダクツ】の商品は手頃な価格ではありますが、価格ではなく価値がある存在として再認識してほしい。例えるなら【リーバイス®】の『501®』のように。オリジナルのアイテムにリスペクトを持って「ユージュアルシングス」のエッセンスを入れることで、それに気づいてほしくありました」
ちょっとしたお出かけにも、日常使いにも対応する「キューブバッグ」がアイコン
【アウトドアプロダクツユージュアルシングス】には、幅広いユーザーに届けるミッションもあります。全国のショピングセンターにも出店を予定しており、これまでセレクトショップ業態が中心のベイクルーズとしても、染谷さんにとっても新たな挑戦。
「このお題をいただいた時、思い浮かんだのが鹿児島に住む義理の姉のこと。【シンチ】のアイテムをオンラインで買ってくれているけれど、ワードローブ全部をネット通販で揃えるのは現実的ではないですよね。ショッピングセンターにあれば気軽に買えるのに、とよく言っていて。義姉のように好きな洋服屋さんが近くにない、地方にお住まいの方って少なくない気がしました。それに都市圏に住んでいても、街にも公園にも遊びに使える洋服やバッグが手頃な価格で手に入れば嬉しいんじゃないかなって」
そんな思いを反映して誕生したのが【アウトドアプロダクツユージュアルシングス】のアイコン的位置づけの「キューブバッグ」です。
スマートフォンや財布など、ちょっとしたお出かけに必要なアイテムが収納できるミニサイズ。ナイロンを採用し、休日のお出かけにも日常使いもしやすいスタイリングを選ばないシンプルさでありながら、染谷さんらしいマニッシュなエッセンスを感じさせるデザインです。キャッチーなカラーもスタイリングのスパイスに最適です。
手頃な価格でもモノづくりに妥協はしない
染谷さんが手掛けるブランドでは日本の産地を大切にしたいとの思いから、メイドインジャパンにこだわってきました。一方で【アウトドアプロダクツユージュアルシングス】は手頃な価格で提供するため、日本の工場以外も視野に入れる必要がありました。
「幅広い方にお届けするためには、日本生産だけというわけにはいきません。ただ仕事が丁寧な海外の工場もたくさんあり、それがわかったのは学びでもありました」
ただ日本でないとできない技術や素材もあります。
「僕はセールをしません。それはまぁいいかで作った商品は売れ残るから、最初からそういうものを作らないという自分の中でのルールです。この思いを大切にしていて、妥協しないとできない場合は【アウトドアプロダクツユージュアルシングス】でも商品化しません」
モノづくりに対する真摯な姿勢を持って、広く普及させていくこと。バランスを取るのが難しそうなこの2つを両立させる感覚を、染谷さんは音楽でこう例えます。
「【シンチ】は尖ったハードコア、【アウトドアプロダクツユージュアルシングス】はより多くの人に届けるポップスのイメージです。どちらがいいとか悪いとかではなく、僕自身20年以上アパレルに携わってきて、ようやくポップスもいける余裕が生まれたという感覚です」
旗艦店の中目黒店は基地のような存在を目指す
目黒川の近くに誕生した中目黒店は【アウトドアプロダクツユージュアルシングス】の旗艦店的位置づけ。店作りにも携わった染谷さんはアットホームで、ここから何か新しいことが始まりそうな期待感が持てるショップを目指しています。
「インスタライブが行えるフォトブースも設置しましたし、バックオフィスが見えるようガラス張りにしました。バックオフィスでカタログのモデルオーディションなどをして、お客様に見てもらうなんてことをすれば、おもしろいし、何かが始まる予感がしませんか。ベイクルーズは大きな会社ですが、完全に分業されていなくて本社勤務の方も接客される企業風土があります。本社の偉い方がお店に来た時、接客してくれたら楽しいな、なんて想像もしています」
中目黒店がオープンする前、ベイクルーズが運営するアウトレットショップ【ベーセーストック】の静岡・御殿場店、兵庫・三田店にポップアップショップを展開したところ、早くも評判を呼んだ【アウトドアプロダクツユージュアルシングス】。今後は2024年4月26日に神奈川・ららぽーと海老名に出店するのをはじめ、年内に2〜3店舗ほどオープンさせる予定。ベイクルーズの店舗がない地域へ出店する可能性もあるので、期待して待ちましょう。
アウトドアプロダクツユージュアルシングス中目黒店
住所/東京都目黒区青葉台1-16-4
営業時間/11:00〜20:00
不定休
※価格はすべて税込みです
Photograph:川本史織
Senior Writer:津島千佳